一人親方労災保険の組合とは？その仕組み・メリット・選び方を徹底解説一人親方が安心して働くために知っておきたい労災保険組合の基礎知識から、メリット・デメリット、選び方までを徹底的に解説します。

建設業や個人事業として現場作業を行う「一人親方」にとって、ケガや事故のリスクは常に隣り合わせです。
しかし、会社に雇われて働く人とは違い、一人親方は通常の労災保険に自動的に加入しているわけではありません。
仕事中の事故で大きなケガをしてしまうと、治療費をする期間の休業による収入減など、生活に大きな影響が出てしまいます。

そこで、一人親方が利用できる制度が、国が認めている 「特別加入制度」 です。

そして、この制度を利用するために必要となるのが、 「労災保険組合や特別加入承認団体」 の存在です。

この記事では、一人親方労災保険の組合とはどのようなものか、加入するメリット、選ぶ際の注意点などをわかりやすく詳しく解説します。

一人親方労災保険の組合とは？

厚生労働省労働局から「承認一人親方が労災保険に加入するには、必ず「特別加入団体」を通して手続きを行う必要があります。

労災保険組合とは、この特別加入制度を管理し、加入・更新・事故対応などを担う重要な組織です。

まずは、その基本的な仕組みや、一人親方が通常の労災保険とは異なるルートで加入する理由について整理していきます。

そもそも一人親方は労災保険に加入できる？

一人親方とは、会社に雇用されていない独立した個人事業主です。

そのため、会社員のように事業主を通して自動的に労災保険に加入しているわけではありません。
しかし建設業をはじめとする現場作業では、転倒や落下、道具による事故など、さまざまなリスクが伴います。

そこで国が設けているのが 「労災保険の特別加入制度」 です。

この制度を利用すれば、一人親方でも労災保険の補償を受けることができ、けがや事故が発生した際に治療費や休業補償の給付を受けることができます。

特別加入できるのは、建設業をはじめとする一定の業種で、国が安全対策や労務管理の必要性を認めている分野に限られます。

つまり、一人親方でも「職種によっては加入できる」と覚えておくと良いでしょう。

「労災保険組合（特別加入承認団体）」とはどんな組織？

労災保険組合（特別加入承認団体）とは、一人親方が特別加入する際に必要な手続きを取り扱う、国が承認した団体です。

加入申請の受付から保険料の納付手続き、加入後の管理、さらには事故発生時の給付請求サポートまで
多くの役割を担っています。

具体的には以下のような業務を行います。

• 加入希望者の加入資格の確認
• 必要書類の案内と受付
• 労災保険料の徴収と国への納付
• 加入証明書の発行（義務ではない）
• 年度更新の案内や脱退の手続き
• 労災事故時の対応・相談窓口

個人では複雑になりがちな書類手続きを、組合が代理で行ったり、わかりやすく案内してくれるなど、一人親方にとって非常に心強い存在です。

国（厚労省）から承認された団体だけが扱える理由

一人親方向けの特別加入制度は、国の公的保険を扱うため、一定の運営能力と経営資産能力、適切な管理体制が整っているかを求められます。

• 加入者の情報管理能力
• 保険料の適切な徴収と納付
• 労災事故時の迅速な対応
• 労災保険事務の総合的な力量
• 加入希望者への適切なアドバイス

など、専門性と責任が必要な業務が、非常に多いためです。

そのため、厚生労働省（および労働局）による審査を通過した団体のみ、特別加入の労災保険を取り扱える仕組みとなっています。

一人親方が特別加入承認団体を利用する理由

一人親方は、自分自身が「事業主」であり「労働者」の両方を担っています。

そのため、会社員のように会社が自動的に手続きをしてくれるのとは違い、労災保険の加入手続きを自分で行う必要があります。

特別加入承認団体は、その複雑な手続きを代行し、事故発生時に適切な補償が受けられるよう支えてくれる存在です。

一人親方が特別加入承認団体を利用する理由や、費用等の基本を説明いたします。

通常の労災保険とは違う「特別加入」という制度

通常の労災保険は、企業（会社や事業主）が労働者を雇用した際に、会社員を自動的に加入する仕組みで、加入申請の手続きや書類のやり取りを、本人ではなく「会社」がすべて行ってくれています。

しかし、一人親方は組織に雇われていない＝雇用主がいないため、自ら加入手続きをする必要があります。

特別加入制度では

• 労災保険加入時必要な書類の作成
• 労災保険加入資格の確認
• 労災保険加入証明の発行
• 保険料の取りまとめ（徴収と納付）
• 業務災害時の給付申請書類作成代行
• 年度更新の書類作成と申告

などを特別加入承認団体が行います。

そのため、一人親方は負担を最小限にして労災保険に加入できるのです。

保険料の計算方法と団体運営費について（保険料＋団体運営費）

保険料は、どの特別加入承認団体でも一定の公式により決まります。

保険料本体 = 給付基礎日額 × 365 × 保険料率 ÷ 1,000

しかし実際に支払う総額はこれだけではなく、各団体で定める以下の費用が加わります：

• 会費や組合費
• 事務手数料など
• 書類発送や事務管理にかかる運営費
• 寄付金など

つまり、

支払う総額 ＝ 保険料本体＋団体運営費

という点は、加入前に必ず確認しておく必要があります。

サイトには「保険料本体」のみ明記し、加入したのちに「組合費」や「団体運営費」を別途請求する特別加入承認団体もあります。
これは、記載義務が特にないため、違法ではありません。

だたし、記載以外の料金を徴収しないと明記されている所や、組合費や会費などの別途かかる費用を掲載している特別加入承認団体を選ぶことが重要です。

建設現場で加入証明が求められるケースが増えている

特別加入制度は補償を受ける目的だけでなく、現場での信用性・信頼性にも関係します。
元請企業が、現場入場の条件として

• 「特別加入の労災保険に加入していること」
• 「加入証明書の提出」
• 特別加入承認団体の団体名

を求めるケースが増えているのも事実です。

これにより、労災保険未加入の一人親方は、仕事が受けられないケースも増えてきました。
そのため、労災保険の特別加入承認団体を通じた加入は、今や「安心のため」だけでなく「仕事に必要な条件」として重要性が高まっています。

労災保険組合の主な役割

労災保険の特別加入承認団体は、加入の窓口となるだけでなく、加入後のさまざまな場面で一人親方をサポートしています。

特に事故発生時（業務災害）は、手続きの流れや必要書類が複雑になりがちなため、特別加入承認団体の支援が重要になります。具体的な役割を見ていきます。

加入申請・更新・脱退の手続き代行

一人親方がスムーズに加入できるよう、申請に必要な情報や書類の作成や案内、労働局への申請代行を行います。

また、毎年必ず必要な「更新手続き」、事業が変わった場合の変更手続き、仕事をやめた際の労災保険からの脱退手続きなど、様々な労災保険事務を担っています。

労災事故時の書類支援・相談対応

事故（業務災害）が発生した場合、一人親方は精神的にも余裕がないことが多く、特に入院や手術などを伴うと、業務災害報告が遅れてしまいがちです。

労災保険の特別加入承認団体は、労災保険補償給付請求に必要な書類を案内し、書類作成や案内などをサポートすることで、スムーズに補償が受けられるよう支援しています。

給付金請求のサポート体制

治療費や休業補償、障害補償など、業務災害から来る様々な状況に応じて、必要となる補償給付種別は異なります。

特別加入承認団体は、どの給付が該当するのか、必要書類は何か、提出期限はいつかなど、細かな部分までサポートします。

一人親方が労災保険に加入するメリット

特別加入制度を利用することで、一人親方はケガや事故から自身の生活を守ることができます。

建設業では現場作業での業務災害リスクが他の業種に比べても非常に高いため、公的保険としての労災保険の重要性は非常に高いと言えます。

ここでは、労災保険へ特別加入することで得られる具体的なメリットを整理していきます。

治療費が全額補償される安心感

仕事中の業務災害や、通勤災害に利用できる労災保険は、治療費が全額補償されます。

健康保険のような自己負担（3割負担など）がないため、事故によって多額の医療費が発生しても安心です。

休業補償や障害補償も受けられる

ケガで仕事ができない期間は収入が途絶えてしまいますが、労災保険では加入する際に自分で選んだ「給付基礎日額」により計算された「休業補償給付」が支給されます。

また、後遺障害が残ってしまった場合には「障害補償給付」、万が一の死亡事故の際には「遺族補償給付」など、様々な補償給付を受けることができます。

現場での信用度が向上する

元請企業や職長からの信頼性が高まり、仕事の受注にも良い影響が出ます。

特に大規模工事では、労災加入が条件となるケースが多いため、加入していることでさらに仕事の幅が広がります。

労災かくしは重罪です

労災保険へ特別加入せずに、仕事中や通勤による（起因とする）発生したケガや病気に対し、健康保険を利用すると、「労災隠し」としなり重罪となります。

労災かくしとは、事業者が労災事故の発生を隠すため、労働者死傷病報告（労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第97条）を

• 故意に提出しないこと
• 虚偽の内容を記載して提出すること
  を表します。

事業者＝一人親方は、労災保険に加入していないからと言って、健康保険を利用して医療給付を受けてしまうと、上記の「故意に提出しないこと」に当てはまります。

さらに、行政の健康保険や、組合の健康保険から、全額100％の返還請求が来る可能性があるだけでなく、悪質なケースと認められた場合には、さらに重い「刑事事件」として書類送検される場合もあるため、虚偽報告による補償給付を受けるのは、絶対にやめましょう。

一人親方の労災保険組合を選ぶポイント

特別加入承認団体は全国に多数あり、費用やサポート体制、運営方針もさまざまです。

トラブルを避けるためにも、信頼できる特別加入承認団体を選ぶことが重要です。

ここでは、加入前に確認しておく内容をまとめてみました。

補償内容や仕組みを丁寧に説明しているか、または説明できるか

特別加入制度は、その内容自体複雑なため、説明を丁寧に行う特別加入承認団体ほど安心です。
また、サイトには記事として丁寧にわかりやすく説明している特別加入承認団体は、安心と言えるでしょう。

団体運営費（会費・手数料）が含み・別途・明確

保険料本体と別の費用は合算されて表示・案内されているか、別であればその他費用を公開しているかどうかは、もっとも重要なチェックポイントです。

事故時のサポート体制は万全か

特別加入の労災保険は、毎年の3月31日付で必ず終了し、4月1日から、新年度へ移ります。
ですから、必ず新年度への更新手続きが必要となります。

更新の遅れは補償の空白期間につながるため、迅速な手続きを行う特別加入承認団体が安心です

よくある質問（FAQ）

特別加入を検討する際に多く寄せられる質問をまとめました。制度の理解を深めるために役立ててください。

まとめ

一人親方の労災保険組合は通称で、正確な呼称は「特別加入承認団体です。一人親方労災保険が独り歩きをして、定着しているようです。

当団体へ連絡やメールが来て、調べてみると「他の団体からご加入されている方」というケースも多々あります。
※一人親方と労災保険という名前を入れている組合や団体が多いためでしょう。

いずれにせよ、労災保険は「労働基準監督署」へ出向いても加入手続きや、業務災害手続きはしてくれません。
厚生労働省・労働局から承認を受けた「特別加入承認団体」から手続きを行い、仕事中の災害から来る経済的損失から身を守りましょう。

西日本労災一人親方部会では、労災保険にかかわるすべての申請書類作成を無料で代行しています。
加入や脱退においては「特別加入承認団体」を通じ申請します。
ですから、ほとんどの労災保険取扱団体では、申請書類の作成を代行しています。
特に、労災事故が発生したら、加入している団体や組合にすみやかに労災事故報告を行いましょう。
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