特別加入の労災保険では、業務災害よって一人親方が亡くなった場合、ご遺族に対して「遺族補償給付」または「遺族給付」が支給されます。
この記事では、対象となる「遺族」の範囲から、給付金額、支給条件、さらには「特別支給金」までをわかりやすく解説します。

遺族とは?

遺族とは、死亡した方のあとに、残された家族・親族を指す言葉です。
法律用語としては、亡くなった人と生計を共にしていた「配偶者や子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」などを含む場合が多く、どの親族までを遺族とみなすかは各法律ごとに細かく規定されています。
ここでは、労災保険法による遺族の定義を見ていきます。

①配偶者(内縁含む)
②子(18歳到達年度末まで/障害児)
③父母(60歳以上または障害)
④孫(同上)
⑤祖父母(同上)
⑥兄弟姉妹(18歳以下・60歳以上・障害者等)

ただし、受給要件としては、「亡くなった方と生計を維持」していた方が条件となり、受給者は、順位が高い方のみとなります。

遺族補償給付とは?

遺族(補償)給付とは、業務災害、または通勤災害より被保険者が死亡した場合に、遺族へ給付される補償の事です。
特別加入の労災保険に加入している一人親方が、労働(業務)を起因とする災害で死亡したと認められた時に、残されたご遺族(前章の方)へ給付される仕組みです。

遺族(補償)給付の給付種類

遺族(補償)給付には、遺族としての条件によって給付される内容が変わります。
給付内容は3種類あります。

  • 遺族(補償)一時金
  • 遺族(補償)年金
  • 特別支給金(年金、もしくは一時期として加算)

遺族補償年金

遺族(補償)年金は、一人親方のご遺族で、受給資格を持つ方の「人数」により支給される金額が異なります。

遺族が一人の場合

給付基礎日額の153日分、または175日分
※175日分になる方は、ご遺族が55歳以上、もしくは、一定の障害状態にある「妻」の場合となります。

例)給付基礎日額が「3,500円型」で153日分と認定された場合
10,000円×153日=1,530,000円/年

2ヵ月に1回の支給となりますので
1,530,000円÷6ヵ月=255,000円/2ヵ月
2ヵ月に1回、255,000円が年金として支給されます。
また、遺族が年金受給資格者であり続ける限り、継続して支給されます。

遺族が二人の場合

給付基礎日額の201日分

例)給付基礎日額が「10,000円型」で201日
10,000円×201日=2,010,000円/年

2ヵ月に1回の支給となりますので
2,010,000円÷6ヵ月=335,000円/2ヵ月
2ヵ月に1回、335,000円が年金として支給されます。
また、遺族が年金受給資格者であり続ける限り、継続して支給されます。

遺族が三人の場合

給付基礎日額の223日分

例)給付基礎日額が「10,000円型」で223日
10,000円×223日=2,230,000円/年

2ヵ月に1回の支給となりますので
2,230,000円÷6ヵ月=371,666円/2ヵ月
2ヵ月に1回、371,666円が年金として支給されます。
また、遺族が年金受給資格者であり続ける限り、継続して支給されます。

遺族が四人以上の場合

給付基礎日額の245日分

例)給付基礎日額が「10,000円型」で245日
10,000円×245日=2,450,000円/年

2ヵ月に1回の支給となりますので
2,450,000円÷6ヵ月=408,333円/2ヵ月
2ヵ月に1回、408,333円が年金として支給されます。
また、遺族が年金受給資格者であり続ける限り、継続して支給されます。

遺族補償年金簡易早見表

遺族の人数年間支給日数年間支給額2ヶ月ごとの支給額(年6回)
1人153日1,530,000円255,000円
1人(妻が55歳以上もしくは障害状態)175日
1,750,000円
291,666円
2人201日2,010,000円335,000円
3人223日2,230,000円371,666円
4人245日2,450,000円
408,333円

小数点以下を含む場合の例として計算していますので、実際の支給時は月ごとに調整されることがあります。

妻が55歳以上もしくは障害状態は、配偶者がではなくあくまで「妻」がです。つまり、「妻」に限定されており、「夫」や「内縁の妻」「同性のパートナー」などにはこの175日分の優遇措置は原則として適用されません。
この規定は昭和時代の「扶養モデル(専業主婦モデル)」を前提に設計されたもので、制度的には今もそのまま踏襲されています。法改正がない限り、「55歳以上の夫」などには適用されません。

遺族補償一時金

遺族年金の受給資格者がいない場合、または受給権を失った場合には「一時金」が支給されます。

遺族(補償)年金の受給資格を持つ遺族がいない場合

以下の補償給付が一時金として支給されます。

・加入や年度更新時に自ら決めた「給付基礎日額の1,000日分」
例)給付基礎日額が「10,000円型」の場合
10,000円×1,000日=10,000,000円
生計を維持していない親族で「受給資格者を持っていないご遺族」へ、10,000,000円が一時金として支給されます。

遺族(補償)年金を受けている方が失権し(権利を失う事)、かつ、他に遺族(補償)年金の受給資格を持つ方がいない場合で、すでに支給された年金の合計金額が給付基礎日額の1,000日分に満たない場合。

以下の補償給付が一時金として支給されます。

給付基礎日額の1,000日分から「すでに支給した年金の合計金額を差し引いた金額」となります。
つまり、年金として遺族補償給付の支給を受けていたが、年金給付の受給権が失権した時は、一時金として支給して終了となりますという事です。
そして、今まで受給していた年金金額から一時金支給金額は差し引かれます。

例1)給付基礎日額が「10,000円型」でかつ、年金受給合計額が1年分で1,530,000円受け取っていた場合
10,000円×1,000日-1,530,000円=8,470,000円
年金から一時金へ移行されたご遺族の方に、8,470,000円が一時金として支給されます。
一時金ですので、給付一回で終了となります。

例2)給付基礎日額が「10,000円型」でかつ、年金受給合計額が10年分で15,300,000円受け取っていた場合
10,000円×1,000日-15,300,000円=▲5,300,000円
既に受け取っていた年金額が、10,000,000円を超えていますので、一時金として受け取れる金額はありません。

特別支給金

特別支給金とは、遺族補償年金、もしくは遺族補償一時金とは別に支給される補償給付の事で、遺族の人数や給付基礎日額に関係なく「3,000,000円」が一時金として支給されます。

  • 遺族(補償)年金+3,000,000円
  • 遺族補償一時金+3,000,000円

一律どちらも、3,000,000円の一時金として付加され支給されます。

付加給付です。あくまでも「一時金」ですので、一回かぎりの支給で終了となります。

遺族補償給付制度のまとめ

一人親の特別加入の労災保険に加入していれば、自分だけでなくご遺族にも公的な補償が提供されます。
業務災害に備えた補償制度として、政府が運営する労災保険は非常に手厚い内容となっています。

  1. 一人親方でも公的な遺族補償が受けられる
  2. 年金・一時金・特別支給金の3種類の給付がある
  3. 給付基礎日額により具体的な金額が決定される
  4. 加入しているだけで「死亡時の備え」となる

遺された家族に安心を残すためにも、特別加入の労災保険は非常に重要な制度です。
現場作業に従事する一人親方の方々は、ぜひこの制度を最大限活用してください。

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