工事現場で労災保険に入っているから私は大丈夫!

このように思っている一人親方や事業主の方がいらっしゃいますが、それは大きな間違いです。また、そのような方が現場、もしくは通勤でケガや病気になっても、政府は一切保障してくれません。

なぜなら、工事現場の労災保険は「労働者」にのみ対象となるからです。

では、わかりやすく解説していきましょう。

工事現場の労災保険とは

労災保険とは、労働を起因とした事故によりケガや病気、もしく障害が残ったり不幸にも死亡した時に使う保険ということは他の章で解説しました。

一人親方だけの特権!特別加入制度の労働者災害補償保険

では、工事現場に労災保険が掛けられているんだから、工事現場に入る人は全員労災保険対象でしょ?と思いがちですが、ここが大きな勘違いとなって、自分は大丈夫!と思ってしまうようです。

以下からは、工事現場の労災保険の事を「現場労災」と呼んでい説明していきます。

現場労災の適応範囲について

工事現場労災が対象となる方は、元請け事業所の従業員や下請け事業所の従業員の方たちも被保険者となり、対象とすることが可能です。対象となる方は名簿で管理されますが、人数が多ければ多いほど、労災保険料も高くなります。

ここで注意しなければならないのが、対象となる方は「従業員」だけです。どういう意味?
ここで言う「従業員」とは、「雇用されている者」ということです。雇用されている者は、法人や中小事業主等に所属し、その事業主の指揮、命令下で仕事を行い、その対価として「賃金」を事業所からもらう方の事です。

そして、このような方を法律的に表すと「労働者」と呼びます。

現場労災は、現場に入って仕事をする「労働者」のみに適応することができます。

ここでお分かりいただけたと思いますが、あくまで国が認めている「労働者」の方のみなんです。

つまり、労働者以外は適応するこができません。

もう一度、国が定める「労働者」とは何かを整理していきましょう。

労働者とは何か?

労働者とは、簡単に言えばある組織や団体や法人等に「雇用」されている者の事すべてを言います。

つまり、労働の対価として事業所から「賃金」を受け取る方の事です。

賃金と給与は違いますよ。
賃金は、支払われる側の事を表し、受け取るものは「金銭」のみです。また、賃金には、交通費や賞与や残業代、各諸手当など事業所から受け取れる金銭の事です。
給与は、払う側と覚えて覚えておけば良いでしょう。
よく給与はいくらもらってるの?と聞く方がいますが、細かく言えば本当は「賃金いくらもらってるの」と聞くのが正解ですね。

工事現場へ入って労働を行い、賃金をもらう方が「労働者」です。
そして賃金は「出来高払い」でなく、事業者側に従うことによりもらえる金銭です。
事業者側に従うとは

  1. 仕事の時間が決められている
  2. 時間内は他の現場で仕事はできない
  3. 事業主の指揮に従って仕事を行う
  4. 出来高ではなく賃金で金銭が支払われる(各種控除されている)
  5. 出勤管理や賃金台帳ある

このうち一つでも当てはまれば、この現場で働く方は「労働者」です。つまり「雇用されている」となり、現場労災が適応されます。

通勤災害は認められません

こちらも勘違いしている方がいらっしゃいます。通勤災害とは、仕事の現場へ向かう際に家から一歩外に出た所から始まります。

つまり、通勤も「仕事」の一つということです。

そして、仕事が終わってから家に戻り、家に一歩入るまでが仕事です。※逸脱した通路を使わない事が条件

ですが、「現場労災」は読んで字のごとく「工事現場の範囲内」のみ適応する労災保険
ですから、現場へ一歩入場してから始まり、現場から一歩離れた瞬間に保険は効かなくなります。

そう考えるとよくわかりますが、事業者に雇用されている方は自然と「労災保険」に加入しているわけです。また、下請けの方も下請け事業者に雇用されていれば「労働者」ですから、現場労災に適応されます。

労働者は通勤災害も守られて、現場での災害も労災に守られているということですね。

労働者ではない一人親方や個人事業主、または家族従事者は、現場労災も使えず通勤災害が起きても何の補償も得られないということになります。

自分を守るための特別加入制度は必須です

では一人親方のように「労働者ではない」方たちはどうしたらいいのでしょう?

それが「特別加入制度」です。

現場労災は労働者のためにあるものだということはご理解いただけたと思います。

つまり、自分で事業を営む者は、法律上では「労働者ではない」ため、自分で自分を守るしか方法がありません。通常の生活では「国民健康保険・健康保険組合」が守ってくれますが、どう考えても仕事をしている時間の方が長いですよね。

元請け様に「労働保険番号を出して」と言われて慌てて特別加入制度で加入する方が散見されますが、建設業を生業として生計を営んでいる以上、特別加入制度に加入している事は今や必須と言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたか。

工事現場の労災保険(現場労災)は、労働者に掛ける保険。しかもそこで労働する労働者の方のみ適応となりますから、一人親方などの「労働者ではない者」は一切保証されない。そして、現場での労災保険ですから、通勤災害では一切使用できないことがお分かりいただけたと思います。

どちらにせよ、現場労災は使用できないので、自分を守るための特別加入制度(一人親方労災保険)には加入しておきましょう。

また、労働保険番号だけ確認したいという方がいらっしゃいますが、現場で必要なものは以下の通りです。

  • 労働保険番号
  • 管理番号(整理番号)
  • 有効期限(労災加入期限)
  • 加入団体名

今一度確認してみてくださいね。