※最後まで必ずお読みください。
新型コロナウィルス感染症が猛威を振るっております。
一人親方や自営業の方からも、罹患されたというご連絡が多くなっております。
質問の内容として一番多いのが、「労災保険は対象となりますか?」です。
ここでは、新型コロナウィルス感染症にかかってしまった(罹患された)時の労災保険給付についてご説明いたします。
労災保険は給付対象
労災保険は新型コロナウィルス感染症の罹患にいても、給付対象となっています。
「対象」となっているとは、「必ずし給付される」という事ではありません。
つまり、給付の対象ではあるが、給付されるかどうかは、その事象と内容によります、という事になります。
まずは、給付対象になる条件が「厚生労働省ホームページ」に記載されていますので、こちらをご紹介していきます。
※厚生労働省ホームページ記載の説明も特別加入制度(一人親方や自営業)の方専用ではなく「労災保険」全体の事となります。
対象となるものは?
- 感染経路が業務によることが明らかな場合
- 感染経路が不明の場合であっても、感染リスクが高い「業務」に従事し、それにより感染した蓋然性(がいぜんせい)が強い場合
※例1.複数の感染者が確認された労働環境下での業務
※例2.顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下の業務
まずここまでを紐解いていきましょう。
1です
感染経路の事ですが、まず「感染経路が明確」で、感染が「業務をすることによって起きてしまった事」が重要です。
一人親方の労災保険は読んで字のごとく「労働災害」ですから、業務を起因としてという事が基本です。
労働時間内であっても、お昼休憩や、15時頃の休憩、もしくはそのための移動に関しては「業務」とみなしません。雑談等の休憩中も業務とはみなされません。
必ず「業務中」にコロナ感染をしたこと、そして「感染経路が確実にわかる」事が重要です。
2です
感染経路が不明の場合ですが、その後ろを読むと「感染リスクが高い業務」となっています。
また、「蓋然性」と….これ読める方どれだけいるんだ?
蓋然性(がいせんせい)-ある事象が起こり得る確実性や、ある事象が真実である、として認められる「確実性」の度合いのことを言い表します。
その場合は、この建物を建てられる蓋然性が強いというらしいです。
では、この文章を要約してみましょう。
「感染した経路がわからなくても、感染する危険性が高い業務をすることを余儀なくされ、そのことにより、コロナ感染をした確実性が強く、コロナ感染したことが本当の事である」
となります…….難しい言葉を使わないで、簡単にしてほしい…..
さて
感染リスクが高い業務とは何か?
例1.では「複数の感染者が確認された」つまり、クラスター感染の事です。
同じ場所で区切られた空間の中で、多数の(厚労省は5人程度以上と定義しています)同時期感染が発覚した時です。
ただし、家庭家族間で5人以上同時感染しても、クラスター感染とは呼びません。それはあくまで「家庭内感染」として定義されるからです。
例2.では「顧客との近接や接触の機会が多い」とされています。これは労働環境の中で「その状態でいる」ことを余儀なくされるという事。
ここでいう「近接」と「接近」「接触」は意味が全く違います。
近接とは、その状態であることを示し、接近は動作を表します。接触は時間や距離で表します。
つまり、お客と近くにいる状態、その状態である時間と距離で定義されます。
時間では、約1時間程度以上、距離では約1m程度以内です。
まとめると
同じ場所で区切られた空間の中で、約5人程度以上のクラスター感染が発生。対人に関しては、約1時間程度以上、距離は約1m程度以内であり、その状態でいる事を「余儀なく」される状態の業務の事、となります。
その他の給付対象
これは余談となりますので飛ばしていただいて大丈夫です。
なぜなら、完全に一人親方や自営業の方には当てはまらないからです。
- 医師・看護師や介護の業務に従事される方は、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として対象
※コロナ感染の経路が、業務と全く関係ないとわかる場合い以外は、基本的に労災保険給付の対象
症状が継続した場合も給付対象
最近では、新型コロナウィルス感染に感染し療養、そして「陰性」となり、療養が解除されたとしても、症状が続く「後遺症」に悩んでる方もいらしゃるとお聞きします。
この際にも、労災保険は給付の対象となります。
- 症状が持続し(罹患後症状があり)療養が必要と認められ場合、保険の給付対象
これは、養成から陰性に変わり、コロナ感染症が終わったとしても、同じ症状、もしくは後遺症状が続いた場合です。
が、
その後ろを読むと、「療養等が必要と認めらる場合」と記載されています。
どういうこと?
必要と認めるのは誰?
罹患された方、本人ではありません。
労災保険を「業務災害」として認めるかどうかは誰が決めるか。
最終的には「管轄の労働基準監督」です。
罹患された方が「後遺症だ」と言い、担当医も「後遺症としての症状」と認めても、その状況を最終的に判断し認めるのは、労働基準監督署という事になります。
勘違いしないでほしいのは、悪意があるという事ではありません。
労働基準監督署は冷静かつ客観的に、適切な判断をしなけらばなりません。
そのために「調査」をします。
労働基準監督署の調査官だって「人間」ですから、そこには情が生まれてしまいがちですが、それは振り切って、あくまで「平等」な立場にたって判断しなければなりません。そういう「仕事」なのです。
皆さんが納めている「税金」から給付をおこなうわけですから、「この人はかわいそうだな」とか「大変そうだな」とか、親戚縁者や知人、友人、家族だからという事は、一切あってはなりません。
そこの判断は揺るがないはずです。
ですから、平等に判断し、必要な方には必ず給付されるという事です。
一人親方は労災保険は使えるのか
端的に言うと、業務災害認定はかなりハードルが高いかもしれません。(最終判断は労働基準監督署)
一人親方(自営業者)は、「その仕事を断る自由」があると定義されています。
例えばですが、元請けから「Aの現場があるから来てくれ」と頼まれても「諸事情により今回はできません」と言える自由がある、つまり自分で「判断し行動ができる」という事です。
それおかしくないか?
仕事をしないとお金が入ってきませんし、断ると次の依頼に響く可能性があるから断れない。
その通りだと思います。
でも、一人親方や自営業であっても、会社の社長となんら変わりはない、と思ってください。
ハードルが高いとは、無理・無駄と言っているわけではありません。
申請をすると、もう大丈夫、給付ができると思われる方もいらっしゃいますので、あくまで最終決定は労働基準監督署の調査によるという事だけはご理解ください。
また、通常の申請処理が終わったとしても、申請者(労災保険加入者本人に)調査書が労働基準監督署から届いたり、調査官が聞き取り調査を行う可能性がありますので、調査書の場合は必ず記載して送り返す、聞き取り調査の場合は必ず調査官の指示に従って協力してください。
まとめ
一人親方や自営業者の方でも、いくら気を付けても新型コロナウィルスに感染する可能性は十分考えられます。
どれだけ気を付けても、感染してしまうことがあるから、厄介なウィルスです。
いままで述べた通り、労災保険が使えるかどうかの最終判断は労働基準監督署となることはご理解いただけたかと思います。
申請業務のほか、労働基準監督署から調査票というものが送られてきたら、必ず回答し送り返す。
聞き取り調査があった場合は、必ず調査官の指示に従い協力をする。
お願いします。
このような時期ですが、始まりがあるものには必ず終わりがあります。
今の時代を一緒に乗り越えていきましょう。
代表理事
大学を卒業後、大手と呼ばれる企業で営業力を発揮。受賞歴は多数。実姉を亡くし人生を考え起業。IT、建設、金融、海事や伝統工芸など様々な事業を展開し経験を重ねる。各業界の経営者、特に士業業界からのセミナー依頼を多数受ける。厚生労働省の承認を得て、特別加入団体を運営。相談者に耳を傾けるため、産業カウンセラーの資格を得て労災関連全般の業務を執り行っている。
人見知りという概念が欠落していて、人との壁を作ることはしませんが、嘘か誠か相手の気持ちに入り込みすぎてバカを見ることも多々あり。
人の笑顔が大好物。嫌いなものは、なぜかシイタケ。細かく切ってもわかるのが得意技。
趣味は釣り・ギター・ガーデニング・DIY・ドライブ・操船etc…特に釣りに関しては遊漁船を経営してしまうほどの釣り好きです。
社会保険制度のうち、労災保険は労働に対しての手厚い補償内容です。
元請け企業や中小事業主、一人親方として働いている方が、業務災害から経済的に身を守る唯一の手段です。この社会保険制度をもっと認知していただければと活動しています。