しゅんせつ(浚渫)工事業とは、河川や港湾などの水底をさらう工事を行う建設業の専門工事です。 建設業法では建設工事が29種類に区分されており、「しゅんせつ工事」はその一つです。

「しゅんせつ」という言葉を初めて聞いた方もいるでしょう。

漢字では「浚渫」と書きます。

河川や港湾などの水底には、土砂などが堆積することがあります。こうした水底の土砂などを掘削・除去する工事が浚渫工事です。

一般的な住宅工事とは異なるため目にする機会は少ないかもしれませんが、河川や港湾などの機能を維持・確保するうえで関係する専門工事です。

しゅんせつ工事現場

この記事では、しゅんせつ工事業とは何かを中心に、浚渫を行う目的、施工場所、代表的な施工方法、仕事内容、土木工事との違い、建設業許可、一人親方と労災保険について、建設業の職人にも企業担当者にもわかりやすく解説します。

しゅんせつ工事業とは?

しゅんせつ工事業とは、河川、港湾等の水底をしゅんせつする建設工事を請け負う業種です。

国土交通省の建設業許可における業種区分では、しゅんせつ工事の内容を**「河川、港湾等の水底をしゅんせつする工事」**としています。

工事例として示されているのが、

しゅんせつ工事

です。

建設業許可では「しゅんせつ工事業」という業種になります。

ポイントは、単純に地面を掘削する工事ではなく、河川や港湾などの水底を対象として行われる工事であることです。

しゅんせつ工事業の基本情報

項目内容
読み方しゅんせつ
漢字浚渫
建設業法上の工事しゅんせつ工事
建設業許可の業種しゅんせつ工事業
分類専門工事
工事の内容河川、港湾等の水底をしゅんせつする工事
主な施工場所河川、港湾など
主な作業水底の土砂等の掘削・除去、運搬等
関連性の高い分野河川工事、港湾工事、土木工事など
一人親方働き方や業務内容によって該当する場合がある
労災保険要件を満たす建設業の一人親方等は特別加入の対象となり得る

浚渫とは?なぜ必要なの?

浚渫とは、河川や港湾などの水底にある土砂などを掘削・除去することです。

水の流れなどによって運ばれた土砂は、水底に堆積することがあります。

たとえば港湾では、土砂の堆積によって水深が浅くなれば、船舶の航行や港湾施設の利用に影響する可能性があります。

河川でも、土砂の堆積状況などに応じて浚渫が行われます。

したがって浚渫は、単に「水底をきれいに掃除する仕事」と考えるより、河川や港湾などに必要な機能を確保・維持するために、水底の土砂等を取り除く工事と理解するとわかりやすいでしょう。

なお、浚渫の具体的な目的は事業や施工場所によって異なります。

しゅんせつ工事はどこで行われる?

建設業法上の定義では、「河川、港湾等」が施工対象として示されています。

代表的な場所を見てみましょう。

河川

河川の水底に堆積した土砂などを掘削・除去するため、浚渫が行われることがあります。

工事の規模や施工方法は河川の状況によって異なります。

港湾

港湾も浚渫工事と関係の深い場所です。

港湾では船舶が航行したり、岸壁などを利用したりするために必要となる水深があります。

必要な水深を確保する目的などで、水底に堆積した土砂を取り除く浚渫が行われます。

その他の水域

工事内容によっては、河川や港湾以外の水域で水底の掘削・土砂除去などを行う場合もあります。

実際の工事が建設業法上どの業種に該当するかについては、工事名称だけでなく具体的な施工内容から判断する必要があります。

しゅんせつ工事にはどんな施工方法がある?

浚渫にはさまざまな施工方法があります。

現場の水深、土質、施工量、周辺環境などによって使用する船舶・機械や工法が異なります。

ここでは、浚渫を理解するうえで代表的なグラブ浚渫とポンプ浚渫を紹介します。

しゅんせつ工事の種類

グラブ浚渫とは?

グラブ浚渫は、グラブバケットと呼ばれる機器などを使用して、水底の土砂をつかみ取って掘削する方法です。

浚渫船などからグラブバケットを水底へ下ろし、土砂をつかみ上げます。

掘削した土砂は、工事計画に従って運搬・処理などが行われます。

水上から水底を施工するため、陸上のバックホウによる一般的な掘削とは作業環境が大きく異なります。

ポンプ浚渫とは?

ポンプ浚渫は、水底の土砂を水とともに吸い上げて浚渫する方法です。

ポンプなどの設備を利用して土砂を吸引し、管路などを通して所定の場所へ送ります。

ただし、すべての浚渫現場で同じ方法が使用されるわけではありません。

施工場所や土質、工事目的などに応じて適切な浚渫方法が選択されます。

しゅんせつ工事業の仕事内容と施工の流れ

浚渫工事は規模や施工方法によって工程が大きく異なるため、一律の施工手順では説明できません。

大まかな流れとしては、

施工計画・現場確認 → 水底状況等の確認 → 浚渫作業 → 浚渫した土砂の運搬等 → 施工結果の確認

と整理できます。

しゅんせつ工事施工工程

1.施工計画と現場条件を確認する

まず、施工範囲、水深、土質、周辺状況など、工事に必要となる条件を確認します。

河川や港湾で行う工事では、水上での施工条件や周辺施設などにも配慮する必要があります。

2.水底の状況などを確認する

どの範囲をどの深さまで浚渫するのか、設計や測量結果などをもとに確認します。

水面からは水底の状況が直接見えにくいため、施工管理も重要になります。

3.水底を浚渫する

計画された工法・機械などを使用して、水底の土砂を掘削・除去します。

グラブ浚渫であればバケットなどで土砂を掘削し、ポンプ浚渫であれば土砂を水とともに吸い上げます。

4.浚渫した土砂を運搬・処理する

掘削した土砂について、工事計画や関係する基準などに従って運搬・処理等を行います。

土砂の性状や工事内容などによって取扱いは異なります。

5.施工結果を確認する

浚渫後は、必要な範囲・深さなどが確保されているか確認します。

工事によっては測量などによって施工結果を確認し、必要な出来形を確保します。

しゅんせつ工事業と土木工事業の違いは?

建設業許可上、「土木一式工事」と「しゅんせつ工事」は別の建設工事です。

しゅんせつ工事は、河川や港湾等の水底をしゅんせつする専門工事です。

一方、土木一式工事は、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事などとして位置付けられています。

河川工事や港湾工事という大きな事業の中で浚渫作業が行われることがあるため、一般の方から見ると同じ「土木工事」に見えるかもしれません。

しかし、建設業許可29業種では「土木工事業」と「しゅんせつ工事業」は区別されています。

そのため、

「河川で行う工事だから土木一式工事」
「港湾工事だからすべてしゅんせつ工事」

というように、施工場所や工事名称だけで判断することは適切ではありません。

実際に請け負う工事の内容を確認して、該当する許可業種を判断する必要があります。

しゅんせつ工事業に建設業許可は必要?

しゅんせつ工事業は建設業許可29業種の一つです。軽微な建設工事のみを請け負う場合を除き、建設業を営むには該当する建設業許可が必要です。

建設業許可には業種区分があるため、どの工事を請け負うかを確認することが重要です。

また、個人事業主や一人親方だからという理由だけで、建設業許可が不要になるわけではありません。

許可の要否は、請け負う工事の内容や請負代金など、建設業法上の条件に基づいて判断します。

建設業許可に関する金額基準などは法改正によって変更される可能性があるため、本記事では変更され得る金額を固定して掲載していません。

実際に工事を請け負うときや許可申請を行うときは、国土交通省や都道府県などの許可行政庁が公表する最新情報を確認してください。

しゅんせつ工事に携わる一人親方とは?

建設業では、会社に雇用される労働者だけでなく、一人親方や個人事業主として現場に携わる人もいます。

浚渫工事でも、仕事内容や契約形態などによって、建設業の一人親方として業務に携わるケースが考えられます。

ただし、浚渫工事は船舶、重機、各種機械などを使用し、多くの作業員が関係する大規模な工事になることもあります。

そのため、「しゅんせつ工事業=一人で浚渫船を動かして工事全体を請け負う仕事」ではありません。

一人親方として関係する場合でも、実際に担当する作業や請負形態はさまざまです。

また、契約書に「請負」「業務委託」「一人親方」と書かれているだけで、法律上の扱いが自動的に決まるものでもありません。

実際の指揮監督関係など、就労実態によって労働者性が判断される場合があります。

しゅんせつ工事の一人親方は労災保険に加入できる?

建設の事業に従事する一人親方等は、一定の要件を満たす場合、労災保険の特別加入制度の対象となります。

労災保険は、原則として労働者を対象とする制度です。

労働者ではない一人親方や自営業者は、通常の労災保険では原則として対象になりません。

しかし、業務の実態や災害の発生状況などから労働者に準じて保護することが適当と認められる一定の人には、特別に加入を認める制度があります。

これが労災保険の特別加入制度です。

厚生労働省が示す一人親方等の対象事業には「建設の事業」があります。

したがって、しゅんせつ工事に従事する人についても、実際の業務・働き方が建設業の一人親方等の加入要件に該当する場合には、特別加入を検討できます。

ただし、一人親方だから自動的に労災保険が適用されるわけではありません。加入要件を確認し、所定の手続きが必要です。

しゅんせつ工事で注意したい事故

しゅんせつ工事の大きな特徴は、水上・水際や船舶・重機等を使用する環境で作業する場合があることです。

具体的な危険は現場や担当業務によって異なりますが、次のような事故に注意する必要があります。

  • 水中への転落
  • 船上や作業場所での転倒・転落
  • 重機や機械との接触
  • 機械への挟まれ・巻き込まれ
  • 吊り荷などによる事故
  • 資材や工具による負傷
  • 船舶などの移動に伴う事故
  • 悪天候や高温環境などによる体調不良

特に水上作業では、陸上工事とは異なる危険があります。

作業内容に応じた救命胴衣などの保護具、機械作業時の立入管理、合図・連絡方法など、現場で定められた安全対策を守ることが重要です。

一人親方であっても、現場の安全ルールや関係法令に従い、自分自身と周囲の作業者の安全を確保する必要があります。

しゅんせつ工事業についてよくある質問

Q
しゅんせつ工事業とは簡単にいうと何ですか?
A

しゅんせつ工事業とは、河川や港湾などの水底をしゅんせつする建設業の専門工事です。

水底にある土砂などを掘削・除去する工事が中心となります。

Q
「しゅんせつ」は漢字でどう書きますか?
A

「浚渫」と書きます。

専門用語で読み方が難しいため、一般向けの記事では**「しゅんせつ(浚渫)」**と併記すると理解しやすくなります。

Q
しゅんせつ工事は建設業29業種の一つですか?
A

はい。

建設業法上の建設工事の一つとして「しゅんせつ工事」があり、建設業許可では「しゅんせつ工事業」として区分されています。

Q
浚渫工事は何のために行いますか?
A

河川や港湾などの水底に堆積した土砂等を除去し、必要な機能を確保・維持する目的などで行われます。

具体的な目的は河川、港湾、工事計画などによって異なります。

Q
浚渫工事にはどのような方法がありますか?
A

代表的な方法として、グラブバケットなどで水底の土砂を掘削するグラブ浚渫や、土砂を水とともに吸い上げるポンプ浚渫などがあります。

実際に採用する工法は、現場条件や土質、施工量などによって異なります。

Q
しゅんせつ工事と土木工事は同じですか?
A

建設業許可上では、「しゅんせつ工事」と「土木一式工事」は別の工事区分です。

河川・港湾工事の一部として浚渫が行われることはありますが、許可業種を判断するときは具体的な請負内容を確認します。

Q
しゅんせつ工事業に建設業許可は必要ですか?
A

軽微な建設工事のみを請け負う場合を除き、建設業を営むには該当する建設業許可が必要です。

許可要件や金額基準については、契約・申請時点の国土交通省または許可行政庁の最新情報を確認してください。

Q
しゅんせつ工事の一人親方は労災保険に加入できますか?
A

建設の事業に従事する一人親方等は、一定の要件を満たせば労災保険の特別加入制度を利用できます。

しゅんせつ工事に携わる場合も、実際の業務内容や働き方が加入要件に該当するか確認することが重要です。

Q
一人親方なら自動的に労災保険に入っていますか?
A

いいえ。

労働者ではない一人親方等が労災保険による保護を受けるためには、特別加入の対象となることを確認し、所定の加入手続きを行う必要があります。

まとめ しゅんせつ工事業は河川・港湾などの水底を浚渫する専門工事

しゅんせつ(浚渫)工事業とは、河川や港湾などの水底をしゅんせつする建設業の専門工事です。

水底に堆積した土砂などを掘削・除去し、河川や港湾などに必要な機能を確保・維持する目的などで行われます。

代表的な施工方法には、グラブバケットなどを使用するグラブ浚渫や、ポンプで土砂を吸い上げるポンプ浚渫などがあります。

また、しゅんせつ工事業は建設業許可29業種の一つであり、土木一式工事とは別の工事区分です。

しゅんせつ工事に一人親方として携わる場合には、自分が担当する工事・作業の内容を理解するとともに、建設業許可、安全衛生、労災保険について確認することも重要です。

一定の要件を満たす建設業の一人親方等については、労災保険の特別加入制度が設けられています。

河川や港湾という特殊な環境で行われる工事だからこそ、工事内容と働き方に応じた安全対策や保険制度について正しく理解しておきましょう。

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