一人親方(ひとりおやかた)とは厚生労働省がその働き方(労働性)や事業を行う手段を表すための言い方の一つです。
一人親方とは
労働者(被雇用者)を使用しないで事業を行う方を「一人親方」と言います。
他のサイト(ホームページ)で「建設業を営み」と限定した書き方をしているのは間違いです。あくまで事業を行う手段の事ですから、業種や業務には関連しません。
ここでは、建設現場の作業に従事する一人親方のことを「一人親方」と表していきます。
国土交通省は「一人親方の働き方」として簡単にチェックできるようにしています。ここに表記していきますので、チェックしてみましょう!
一人親方の働き方チェック1
急な仕事の依頼が来たが、別の仕事があったため断った
仕事が終わった後に予定外の仕事の依頼があったが断った
請負元(会社等)の就業規則などの服務規律には従っていない
仕事の就業時間(始業時間や終業時間)は自分で決めている
仕事が早く終わった為、請負元(会社等)の了解はなく(挨拶は除く)現場上がりする
仕事が早く終わったら、自分で見つけた他の現場にいける
日々の仕事の内容や方法は自分で決めている(工程調整、事故防止指示は除く)
仕事の日程が自分の都合上合わないため、代わりの者を自分の判断で探す
請負元(会社や依頼主)から仕事の依頼がある、もしくは仕事を取っている
一人親方の働き方チェック2
仕事の報酬は、工事代金や賃金(給与や時給ではない)で支払われている
代わりの者の仕事の報酬は、自分がもらってから支払う
仕事のミスや作業遅延による損害は自分が負担している
現場で使用する機械や器具(手元工具は除く)は自分で持ち込んでいる
仕事で使う材料は、自分で調達している
報酬は工事の出来高見合いで支払われる(請負代金等)
一人親方判断のまとめ
いかがでしたか?
こちらは「国土交通省」が開示しているチェック表をわかりやすく解説しています。
さらに簡単にまとめると
- 請負元が必ずいること
- 請負元の就業規則に縛られないこと
- 一日の仕事の時間や量は自分で決めていること
- 仕事に必要な人・物・道具・材料は自分が準備していること
- 仕事の報酬は出来高払いで、時間給や給与ではないこと
- 仕事をやるかどうかは自分で判断していること
- 社会保険は、国民健康保険(組合保険)国民年金保険であり、協会けんぽや厚生年金ではないこと
- etc
気を付けないといけないのは、必ず「請負元」が存在するという事です。依頼主がいないと仕事との受注関係がないので当たり前のことですが、一人親方というのは、請負元との工事請負によって仕事をしているということですね。
しかしこういう例はありませんか?
- 友人に頼まれて屋根をなおした
- 知人に頼まれて壁紙を貼りなおした
- 親戚に頼まれて家を建てた
- 自分で自分の家をリフォームした
- etc
これは、請負元がはっきりしていない(友人・知人・親戚・自分等)ことと、注文、注文請書や発注書、工事請負書なども介在しないケースも多く、仕事ではなくて、好意でちょっとやっただけと捉えられてしまう場合があります。(DIYみたいな感じでお手伝い的)
労働基準監督署や労働局は「仕事」とは認めないケースがあります。
つまり、「一人親方として仕事をしているわけではない」ということになりますから、その時は一個人がやっただけとなってしまうケースがありますので、ご注意ください。
また、一人親方でも労働するものを使うことは可能ですが、以下の基準がありますので把握しておきましょう。
- 年間を通して100日未満の労働日数
- 1週間の労働時間が20時間以内の労働時間
- 月30日未満の労働日数
詳しくは、専門家に相談するのが良いでしょう。
個人事業主とは
個人事業主とは、読んで字のごとく「個人で事業を行う者」のことを言います。
あれ?
一人親方と何が違うの?
ってなりますよね。
実はここの判断が一番難しく、自分は一人親方なのか個人事業主なのかを悩んでしまうケースが多く見かけられます。
他のサイト(ホームページ)では、「開業届」を出したら個人事業主です、と説明しているところがありますが、これも間違えです。
一人親方も、フリーランスも「開業届」は出せるからです。
では個人事業主とは何でしょう?以下を参考にしてみてください。
- 業種は決まっておらず(IT関連・店舗経営・youtuberなど)なんでもOK
- 事業主が一人とは決まっていない
- 労働者を雇用することができる
- 労働者を雇用する人数に制限はない
- 従業員へ給料として支払うことができる
- 個人事業主自体には給与という概念はない
- 社会保険は、国民健康保険(行政や組合国保)国民年金であり、厚生年金や協会けんぽ等の制度へは加入できない
- もちろん、雇用されていないので雇用保険には加入できない
- etc
開業届を出し、屋号(雅号)を決めて事業を行い、収入を得ます。一人で事業を行おうが、従業員が多数いようが、個人事業主として事業を行うことができます。
ただし、気を付けなければならないのが従業員の人数と事業を行う業種です。
- 常時使用する従業員が5名未満
- 任意適応事業所である
上記以外は、社会保険への強制加入となります。上記記載のように、常時使用の従業員が5名以上いる個人事業所では、従業員への社会保険加入が必須となります。
しかし、常時使用従業員が5名以上でも「任意適応事業所」であれば、社会保険の強制加入とはなりません。
参考
強制適用事業所
製造業・土木建築業・鉱業・電気ガス事業・運送業・清掃業・物品販売業・金融保険業・保管賃貸業・媒介周旋業・集金案内広告業・教育研究調査業・医療保健業・通信報道業等
任意適用事業所
クリーニング業・飲食店・ビル清掃業・農業・漁業等の農林水産業・飲食店や料理店業・理容業や美容サービス業・社会保険労務士や税理士などの士業・神社やお寺などの宗教業
このように、個人事業主(個人事業所)であっても、常時使用の労働者は何名でも雇用できます。
あとは、常時使用の労働者へ「社会保険」を適応するか否かだけであり、社会保険を適応したからと言って、個人事業主ではなくなるという事ではありません。
今度は一人社長と何が違うの?となりますよね。
続いて説明していきましょう。
一人社長とは
一人社長とは、定義付けされた名称ではありません。一般的に皆さんが使っている呼称で、いわゆる「造語」です。
では、個人事業主との違いは何でしょうか?
とても簡単なので把握しておきましょう。
- 法人(株式会社や合資会社など)として登記している
- 個人事業主は、事業と経営者が同一人格であるが、法人は事業と経営者が別人格(法律で定められた人であるから法人と呼ぶ)
- 事業全体が法人のものであり、経営者のものではない
- 利益が無くても法人税(法人県民税・法人市民税)が徴収される
- etc
わかりやすいですね。実は、事業を行う(営む)ことに関しては、個人事業主でも法人事業主でもなんら変わりはありません。
変わるのは、事業を法人化するかしないか、それだけです。
そして、法人化しても労働者を雇用しないで一人で事業を行えば「一人社長」と通称として言うことになります。
フリーランスとは
最後に、フリーランスとは何でしょう。
フリーランスの定義も一人社長と同じで、特に定められていません。つまりは「造語」です。
あえて言うならば
- 雇用されていない
- 自分の技能を活かし業務を遂行し利益をあげる
- 組織や個人から業務を請け負い業務(業務委託)を遂行する
- etc
こうなると、一人親方と個人事業主と何が違うの?となりませんか?
その通りで、例えば建設業に従事する一人親方も、フリーランス(フリーランサーやフリーエージェントとも呼ぶ)です。個人事業主もフリーランスといえるでしょう。
このように、フリーランスという言葉自体に特に定められた定義は存在しません。
雇用されていない(企業や組織、団体に所属せず、労働の対価として給与をもらっていない)ものの総称をフリーランスと呼んでいるのが一般的でしょう。
まとめ
いかがでしたか?
政府が定義している事業の営む方法により定義されている「名称」と、悪い言い方をすれば、勝手に使っている「名称」とで、日本では特にごちゃごちゃになっているのが事実です。
最後に簡単な判断材料となると思いますので記載しておきますので、今一度参考にしてみてください。
- 建設関連事業を自分一人で行い(子方や同業種の仲間へ依頼することは除く)請負元から仕事を依頼され、請負い、出来高払いで金銭の受け取りがあるものが、一人親方。
- 自分一人、もしくは家族や従業員(雇用)を交えて事業を行い、請負元がいなくても技術や商品を提供、販売もでき、その対価として売り上げを上げるものが、個人事業主。
- 事業を法人化し(株式会社や合資会社など)会社を作り、自分一人で代表取締役として経営を行うものが、一人社長。
- 会社や団体などに所属せず、自分の技能を売りに事業を行い、給与としてではなく、自分の技能の対価を出来高払いや報酬で生業をしている者が、フリーランス。
- 法人化せず、組織に所属せず、時間にも縛られず、自分の能力と技術で生計を維持するものは俗称みんなフリーランス。
一人親方は建設業だけとは限りませんが、ここでは「建設業に従事する者」とさせていただきました。
誰にも束縛されず、自分の技術や技能で事業を行い商売をしているものは、法人を除いてみんなフリーランスなんですね。
※日本では、個人事業主の行っている事業を「自営業」、時間や日々に束縛されず雇用されないで行う職業のことを「自由業」と呼んでいるようです。
確かに、個人事業主のことを「自営業者」とは言いますが、フリーランスの方を「自由業者」とは言わないですよね。
代表理事
大学を卒業後、大手と呼ばれる企業で営業力を発揮。受賞歴は多数。実姉を亡くし人生を考え起業。IT、建設、金融、海事や伝統工芸など様々な事業を展開し経験を重ねる。各業界の経営者、特に士業業界からのセミナー依頼を多数受ける。厚生労働省の承認を得て、特別加入団体を運営。相談者に耳を傾けるため、産業カウンセラーの資格を得て労災関連全般の業務を執り行っている。
人見知りという概念が欠落していて、人との壁を作ることはしませんが、嘘か誠か相手の気持ちに入り込みすぎてバカを見ることも多々あり。
人の笑顔が大好物。嫌いなものは、なぜかシイタケ。細かく切ってもわかるのが得意技。
趣味は釣り・ギター・ガーデニング・DIY・ドライブ・操船etc…特に釣りに関しては遊漁船を経営してしまうほどの釣り好きです。
社会保険制度のうち、労災保険は労働に対しての手厚い補償内容です。
元請け企業や中小事業主、一人親方として働いている方が、業務災害から経済的に身を守る唯一の手段です。この社会保険制度をもっと認知していただければと活動しています。