インボイス制度とは「敵格請求書保存方式」と言いますが、職人がいなくなる制度という方もいます。
なぜそのように言われているのでしょうか。
職人さん(ここでは一人親方さん)が、なんだか大変になるという説明やyoutube、記事がやたらと目立ちますよね。
すべてがそうだとは言えませんがこれは職人さんが「インボイス」で検索した時にキーワードでヒットさせて、自分のサイトへ誘導させているためだと思われます。
そんな広告やネット記事、SNSに惑わされずにいったん落ち着いて対応していきましょう。
【インボイス制度】買い手と売り手ってなに?
国税庁のサイトを閲覧するとわかりますが、インボイス制度を説明する際には必ず「買い手側・売り手側」が出てきてそのうえで説明が始まります。
さて、この「買い手側・売り手側」とはなんでしょう?
適格請求書(インボイス)とは、
ー国税庁ー
売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。
具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。
実は、この言葉勘違いしやすいのです。
買手側も、インボイス導入で大変になる?
先ほど述べたように、インボイス制度導入は元請けにも下請けにも、さらに孫請けにも影響を与えます。
まずよく言われている「インボイス導入は一人親方や職人さんだけが大変になるの?」
これは本当でしょうか?
<買手側> 買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。(※)買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。
ー国税庁ー
国税庁のサイトに記載しているのが確実なため引用しています。
ここでは、買手側を「元請け」とし、売手側を「一人親方」とします。
元請けは一人親方へ仕事を発注したときに一人親方から「請求書」をもらい、仕事が終わったら(竣工時一括払いとした時)その請求書に沿って支払いをします。
一人親方へ支払いをしたのち、一人親方から元請けに対し「領収書」を発行し、金銭の取引も終了します。
これが通常の流れです。
令和5年10月1日から、一人親方からもらった「請求書」に国が定めた「一定事項」が記載されているものでないと、元請けも消費税の控除を受けることが出来なくなります。
一定の事項とは、インボイス登録番号・適用税率と消費税額の事で、今まで元請けが一人親方から貰っていた「請求書や領収書」では使えません。
上記に記載した事項が追加されていないと、その請求書は消費税控除には使えないので、確定申告が終わったあと、納付通知書が届き「消費税を全額納付してください」となってしまいます。
※発行されたのちに追記されたものは使用できないのでご注意ください。
預かり消費税(支払って貰った消費税)から、仕入れ消費税(支払った消費税)を引く(控除する)ためには「インボイスの登録番号、税率、消費税額を正確に印字した「請求書」」をもらわなければならず、仕事を依頼した相手がインボイスの登録業者(課税登録業者)かどうかを確認する手間と管理が必要になっていきます。
また、元請けは仕入れ明細書(家庭で言えば、家計簿みたいのもの)を作っていると思いますが
これからは仕入れ明細書に記載する事項がインボイス導入後は項目が増えます。
自身の仕事も増えることになります。
仕入れ明細書の項目
①作成者の名前もしくは名称
②課税業者から仕入れた相手の名前もしくは名称ならびに
インボイス登録番号
③仕入れた際の年月日
④仕入れに係る内容(何を仕入れたか)
⑤税率ごとに合計した支払い消費税合計額と
適用税率(8%・10%)
⑥税率ごとに区分をした消費税額など
※増えたところは太字になっています
ここで適用税率と言っているのは、消費税には軽減税率の8%と10%の率が存在しているからです。
※消費税は「消費税率と地方消費税率」の2つを足した税率
会社(法人)であっても、手間が増えるのは避けたいですし、さらに「管理」することが増えてしまうことは、なるべく避けたい(業務量が増えてしまうため)と思うのは当然です。
仕事を依頼する方も大変になりますよね。
【売手側】一人親方や個人事業主は?
では、売り手側はどうでしょうか?
国税庁のサイトを見てみましょう。
<売手側> 売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。
ー国税庁ー
国税庁のサイトが一番信用できますから(当然ですが)引用させていただいております。
ここで記載されている内容をかみ砕いて説明すると
売手側は、相手から「正確な消費税の税率と消費税額を請求書を求められた」ら必ず渡さなければいけません。
また、消費税10%のみの取引業者であれば、仕入れ明細書は作らなくて良いとされています。
しかしなるべくなら、一人親方でも作成する方が良いでしょう。
仕事をする上で何を仕入れていたかを把握できるからです。
仕入れ明細書においては売り手側(元請け会社など)と買い手側(一人親方など)が確認したものでなくてはなりません。
こうなると、売り手側もインボイス制度の導入に際し仕事が増えてしまいますね。
売り手側とか買い手側とか、わけわからん
あれれ?ってなりましたよね。
なんだかよく立場が・・・・
これは、買い手と売り手の説明が不足しているからです。
国税庁や専門家や士業などの多くは
「これくらいわかっているだろう・こんなことはわかるだろう」という卓上の説明なのですね。
では、簡単に見てみましょう。
皆さんが労働者(給与収入者)として考えてみましょう
たとえば、Amazonや楽天、yahooやgoogleでお買い物をしたとしましょう。
その時は、皆さんが「買手」となります。
そして、ネットショップ側が「売手」となります。
もっと言えば洋服や食材を買う側としては「お金を出して物を買う」側になりますよね。
お買い物(ネットショップも同様)をする際に、請求書などもらったことありますか?
八百屋さん・居酒屋さん・ラーメン屋さんへ行かれて、請求書もらったことありますか?
ないと思います。
つまり、雇用されているもの(労働者・会社員など)の一般生活において「買い手=お金を払って買い物をする」請求書なんてもらうことはほとんどありません。レシートを見ればわかりますが「領収書」もしくは「請求書兼領収書」って書いてあります。
さらに言うと、請求書を保存しておいて「確定申告」なんてしないですよね。
ですから、消費税を支払ったとしても「仕入れることが無い」ため、一方通行で消費税を納税しているからインボイス制度導入なんて何騒いでるの?となってしまっています。
みなさんが粋なお蕎麦屋さんだったら
お蕎麦大好きな私ですが、なので一人親方さんが「お蕎麦屋」を開業したと考えてみましょう。
このような声が聞こえてきそうです。
いかんいかん!午後も仕事頑張んなくっちゃ!
お会計!
なんて元気がいいんでしょう(笑)
さてこの会話でわかるように、来店したお客さんが「請求書ちょうだい」って言ってますか?
言わないですよね。
先程も説明した通り、一般の方が買い手の時には「請求書ちょうだい」なんて言わないんです。ここでいう「けんいち」さんは、会社員。(孤独のグルメみたい)
請求書を請求しても何の意味もない。で、880円も「仕入れたものは天ぷらそぼが800円で、消費非税が80円で」なんてもうすでに考えていません。
このお昼代は、会社に請求しても「経費」として参入してくれませんからね。
では!
買手側が事業主(一人親方だったら)
けんいちさんが交代します。
その名も「けんちくさん」が来店しました。
とろろそばの大盛りとカレー丼ください!
とろろそばの大盛りとカレー丼ね~
動けるかこれ?(笑) お勘定!
はやってんのかい?
だから兄ちゃん払わなくていいんだよ
二重課税ってなっちゃうんじゃねーの?
それはいけないぜ! 兄さんは、払わなくていいぜ!うちが払ってるんだからな
どうでしょう?
ここで重要なのは、相手が買い手で「事業主」つまり、会社員じゃない時です。
そして、重要な言葉「二重課税」
そばたろうさん、さすがに二重課税には敏感でした。(この説明はのちほど)
けんちくさんは事業主、つまり一人親方でした。
このお昼代は通常は・・・ですが、わかりやすくするためにこのようなやり取りにしてみました。
けんちくさんは、「請求書ちょうだい!」つまり、請求書を出すように要求しましたが、そばたろうさんはその意味も知らず、また「インボイス」に登録もしていませんでした。
そうなると、けんちくさんは「とろろそば・カレー丼」の内訳の証拠がなく、しかも「消費税額と消費税率」の証拠がないため・・・仕入れ明細書に記入もできず、さらに適格請求書がないため「消費税の控除」も受けられなくなってしまいました。
そばたろうさんもそば屋ですから「そば粉」を業者から仕入れていて、その消費税は支払っていますよね。
そして、買い手側から預かった「消費税」もそば粉で支払った消費税10%から、けんちくさん(買い手)からもらった「とろろそばとカレー丼」の消費税を差し引くことが出来なくなります。
買手側や売手側は立場によって変わってしまう
このように買手側と売手側は、その時の立場によってころころ変わってしまいます。
そのたびに「私は売手側?買手側?」なんて考えていられません。
こう考えていきましょう。
売手側の立場の場合は
・仕事を誰かに依頼する側(仕事を頼むとき)
・領収書を出す側
買手側の立場の場合は
・仕事を誰かに依頼された側(仕事を頼まれたとき)
・領収書をもらう側
まとめ
いかがでしたか?
インボイスが導入されると、一人親方や自営業者、個人事業主だけが生きづらくという事ではありません。
会社側も買手側と売手側となって、書類が煩雑化していきます。
さらに中小企業でも、さらに一人親方なども、事業をおこなうものたちにとって
全員に影響が出て、仕事も増えてしまします。
企業は社員や税理士がいて、書類やってもらえるからいいじゃないか!
違いますよ。
社員をさらに雇い入れしたり、税理士に頼んだり、お金も時間も管理も増えてしまいます。
会社が大きくなればなるほど大変になる。
一人親方だけじゃなく、みんな平等に大変になるってことです。
書類が増えるという事は、そういう事ですね。
代表理事
大学を卒業後、大手と呼ばれる企業で営業力を発揮。受賞歴は多数。実姉を亡くし人生を考え起業。IT、建設、金融、海事や伝統工芸など様々な事業を展開し経験を重ねる。各業界の経営者、特に士業業界からのセミナー依頼を多数受ける。厚生労働省の承認を得て、特別加入団体を運営。相談者に耳を傾けるため、産業カウンセラーの資格を得て労災関連全般の業務を執り行っている。
人見知りという概念が欠落していて、人との壁を作ることはしませんが、嘘か誠か相手の気持ちに入り込みすぎてバカを見ることも多々あり。
人の笑顔が大好物。嫌いなものは、なぜかシイタケ。細かく切ってもわかるのが得意技。
趣味は釣り・ギター・ガーデニング・DIY・ドライブ・操船etc…特に釣りに関しては遊漁船を経営してしまうほどの釣り好きです。
社会保険制度のうち、労災保険は労働に対しての手厚い補償内容です。
元請け企業や中小事業主、一人親方として働いている方が、業務災害から経済的に身を守る唯一の手段です。この社会保険制度をもっと認知していただければと活動しています。