一人親方が業務災害で万が一(死亡)があった際に、一人親方労災保険へ加入していれば国から「遺族年金」が支給される場合があります。別の章でご説明しましたが、場合があるというには「年金」ではなく「一時金」の時もあるからです。

では、労災遺族「年金」となる条件を紐解いていきましょう。

遺族年金の受給条件と受給資格者

遺族年金は、労災保険の被保険者に万が一があった時に、残された遺族へ経済的支援として給付される公的年金です。

まずは、受給条件を見てみましょう。

遺族年金の受給条件

  1. 現場で仕事中、あるいは現場から家、家から現場への移動中(過度な逸脱がない事)の災害(業務災害)が原因で亡くなった時。労災保険の被保険者に生計を維持されていた遺族が遺族年金を受給することができます。
  2. 遺族年金を受給できる遺族は、「受給資格者」と「受給権利者」とにわかれます。

1に関しては簡単に理解できるかと思います。
業務中であること(労働中)、もしくは通勤中である事です。一人親方に関しては、家を一歩出た時から、現場で働き、家に一歩入るまでの間を業務中とします。

ここで気を付けたいことは、家を出ないといけないという事です。

例えば、家の中で仕事の準備中にケガをした、というのは「業務災害」としてみとめられません。また、駐車場に車を置いて道具を持ち、家に入ったら転んでけがをした。これもダメです。家から出たところでなくては、業務中とは認められません。

通勤の道筋においても、例えば通勤中にお昼ごはんを買いにコンビニに寄った、もしくは子供を保育園へ送迎するために寄ったは認められますが、過度な逸脱行為は認められません。コンビニに入ったところでケガをしたも認められません。

生計を維持されているとは

  • 同居していること
  • 同居していなくても、仕送りしている、健康保険の扶養親族であること
  • 加給年金対象者で前年の収入が850未満、または所得が655万5千円未満であること

加給年金対象者とは、厚生年金被保険者20年以上・65歳到達時に配偶者や子供の生計を維持・配偶者や子供の年収が850万(所得650万)未満であることです。

一人親方でも、正規雇用者(会社員)時代が20年以上ある場合には、65歳になり年金支給を受ける場合には、加給年金対象者になります。

遺族年金の受給資格者

一人親方の労災保険の被保険者の遺族年金の「受給資格者」は以下の通りとなります。

生計を維持されていた人が条件で以下の内容に該当した時です。

  1. 配偶者が、妻の場合は年齢制限はなし。
  2. 配偶者が、夫の場合は55歳以上60未満であること
  3. 子供は、18歳未満であること
  4. 父母は、55歳以上60歳未満であること
  5. 孫は、18歳未満であること
  6. 祖父母は、55歳以上60歳未満であること
  7. 兄弟姉妹は、55歳以上60歳未満であること

ただし、障害等級5級以上の身体障害の場合には年齢条件はなくなります。また、18歳未満とは、18歳になった「日」から最初の3月31日までを指します。

このように、年齢によって受給資格者が決まっていますが、配偶者が「妻」の場合だけ年齢制限はなくなりますので覚えておきましょう。

遺族年金の受給権者の順位

受給権の順位とは、遺族年金を受け遺族の順位の事を表しています。

下記に1~10までの順位を示します。

  1. 配偶者の妻または60歳以上の夫
  2. 18歳未満の子供
  3. 60歳以上の父母
  4. 18歳未満の孫
  5. 60歳以上の祖父母
  6. 18歳未満の兄弟姉妹、もしくは60歳以上の兄弟姉妹
  7. 55歳以上60歳未満の夫
  8. 55歳以上60歳未満の父母
  9. 55歳以上60歳以上の祖父母
  10. 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹

上記1から上記6には障害等級が5級以上に該当する障害者も含まれます。
上記7から上記10の該当者は60歳になるまでは、年金を受給することはできません。

例えば、受給資格者の家族として、妻と子供が2人、母親がいる家庭で夫が一人親方、後の家族は生計維持されるものとします。
順位を見ると、1の配偶者の妻とありますので、妻が自分の分と子供2人と母親の分を受給することになります。次に、母親が受給資格が無くなると、2の18歳未満の子供の年齢が上の者が受給権利者となります。

このように、順々に受給資格者が変わります。このことを、転給と言います。

まとめ

ここでは、業務災害死亡の際の遺族年金の受給に関して説明いたしました。

遺族年金は、受給条件と受給資格者、受給権者とありますが、そもそも受給条件が合わなければ出ないという事を除いて、ご家族で誰が年金受給資格があり、そして誰が受給権者かは確認しておいても良いかと思います。

例えば、父子家庭の場合はどうなのか?子供は何歳なのか?配偶者の妻は問題ないとして、生計を維持されるものは誰なのか?などです。

遺族年金はもらえないとしても、一時金としては支給されるなど、ご遺族の安心のために今一度見てみてはいかがでしょうか。

遺族(補償)給付についてはこちらをご覧ください。
遺族(補償)給付と遺族給付編