塗装工事業とは、塗料や塗材などを工作物に吹き付けたり、塗り付けたり、貼り付けたりする建設業の専門工事です。 国土交通省が示す工事例には、塗装工事のほか、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事があります。

塗装工事と聞くと、戸建住宅やマンションの外壁をローラーや刷毛で塗る仕事をイメージする方が多いかもしれません。

しかし、建設業法上の「塗装工事」は、建物の外壁塗装だけを意味するものではありません。

建築物をはじめ、鋼構造物などさまざまな工作物を対象とする塗装があり、道路上の路面標示工事も塗装工事の例として位置付けられています。

塗装工事の職人

また、塗装職人として経験を積み、会社に雇用されるのではなく、個人事業主や一人親方として現場で仕事をする人もいます。

この記事では、塗装工事業とはどのような建設業なのかを中心に、仕事内容、工事の種類、施工の流れ、防水工事との違い、建設業許可、一人親方と労災保険について、職人にも企業担当者にもわかりやすく解説します。

塗装工事業とは?

塗装工事業とは、塗料・塗材などを工作物に吹き付け、塗り付け、または貼り付ける工事を行う建設業です。

建設業法では、建設工事が29種類に区分されており、その一つが「塗装工事」です。

国土交通省が示している建設業許可の業種区分では、塗装工事について「塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事」とされています。

具体的な工事例は次のとおりです。

  • 塗装工事
  • 溶射工事
  • ライニング工事
  • 布張り仕上工事
  • 鋼構造物塗装工事
  • 路面標示工事

つまり、建設業における塗装工事業は、一般住宅の外壁を塗る仕事だけではありません。

建物から鋼構造物、道路の路面標示まで、さまざまな工作物を対象とする専門工事です。

塗装工事業の基本情報

塗装工事業について、AI検索や読者が要点を確認しやすいように基本情報をまとめると次のようになります。

項目内容
建設業法上の工事塗装工事
建設業の業種塗装工事業
分類専門工事
主な材料塗料、塗材など
主な施工方法吹付け、塗付け、貼付けなど
工事例塗装、溶射、ライニング、布張り仕上、鋼構造物塗装、路面標示
主な作業下地確認、下地処理、養生、塗装、仕上がり確認など
一人親方塗装工事に従事する一人親方もいる
労災保険建設業の一人親方等は一定の要件のもと特別加入の対象

塗装工事は何のために行う?

塗装工事には、対象物を美しく仕上げるだけでなく、使用する塗料・塗材や施工対象などに応じたさまざまな目的があります。

たとえば、建物の外壁を塗装すると、外観を整えたり、既存の色から別の色へ変更したりできます。

一方で、塗装は見た目だけを目的とするものではありません。

使用する材料や仕様によっては、施工する部分を外部環境から保護したり、特定の機能を持たせたりする目的もあります。

そのため塗装職人には、「きれいに塗る技術」だけでなく、施工対象の状態を確認し、仕様に合った下地処理や材料、工程で施工する知識が求められます。

塗装工事にはどんな種類がある?

国土交通省が示す塗装工事の例には、塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事があります。

ここでは代表的な工事をわかりやすく見ていきましょう。

塗装工事の種類

建物の塗装工事

一般の方が「塗装工事」と聞いてイメージしやすいのが、住宅、マンション、ビルなどの建物を対象とする塗装です。

施工箇所としては、建物や工事内容に応じて外壁、屋根、軒天、鉄部、木部などさまざまな部分があります。

施工では、刷毛やローラー、吹付け用の機器などが使用されることがあります。

ただ塗料を塗れば完成するわけではなく、下地の状態を確認し、必要な下地処理や養生を行ったうえで、仕様に従って塗装することが重要です。

溶射工事

溶射工事も、国土交通省が示している塗装工事の例の一つです。

溶射は、材料を加熱して溶融または軟化させ、対象物の表面に吹き付けて皮膜を形成する技術です。

一般的な住宅の外壁塗装とは施工方法が異なりますが、建設業許可の業種区分上では塗装工事の例に含まれています。

ライニング工事

ライニング工事も、建設業法上の塗装工事の例として示されています。

ライニングとは、対象物の表面を材料で覆い、保護層などを形成する施工を指して使われる言葉です。

使用材料や施工対象によって施工方法や目的が異なるため、「ライニング=一般的なペンキ塗り」と考えるのではなく、塗装工事業に含まれる専門施工の一つとして理解するとよいでしょう。

鋼構造物塗装工事

鋼構造物塗装工事とは、鋼材などで構成された工作物に塗装を行う工事です。

国土交通省の工事例でも、鋼構造物塗装工事は塗装工事業に含まれています。

建築物だけでなく、さまざまな鋼構造物が施工対象となり得ます。

鋼材の表面状態や使用環境などを考慮しながら、定められた仕様に沿って施工する必要があります。

路面標示工事

「道路の白線も塗装工事なの?」と疑問に思う方もいるでしょう。

路面標示工事は、国土交通省が示す塗装工事の工事例の一つです。

道路などに線や各種標示を施工する仕事で、建築物の外壁塗装とは施工対象も作業方法も異なります。

このように「塗装工事業」という業種には、一般にイメージされる住宅塗装より広い範囲の工事が含まれています。

塗装職人の仕事内容は?基本的な施工の流れ

現場や材料、仕様によって工程は異なりますが、建物の一般的な塗装工事を例にすると、施工箇所の確認→下地処理→養生→塗装→仕上がり確認という流れで進められます。

塗装工事施工の流れ

1.施工場所と下地を確認する

まず、どこをどのように塗装するのかを確認します。

改修工事であれば、既存塗膜の状態、汚れ、ひび割れ、さびなど、施工対象の状態を確認することも重要です。

2.下地処理を行う

塗装する面を整えます。

必要となる作業は施工対象によって異なりますが、清掃や既存塗膜の処理、鉄部のさびに対する処理などが行われる場合があります。

塗装は仕上げ部分が目立ちますが、その前の下地処理も施工品質に関係する重要な工程です。

3.必要な部分を養生する

塗料を付着させたくない場所などを保護します。

窓、設備、床面など、現場に応じて必要な部分を養生し、周囲への塗料の飛散や付着を防ぎます。

4.仕様に従って塗装する

下地を整えた後、指定された塗料・塗材などを使用して施工します。

ローラー、刷毛、吹付けなど、施工方法は工事内容によって異なります。

また、複数の工程で塗り重ねる仕様もあります。

「何回塗ればよい」と一律に決めるのではなく、採用する材料や工法、仕様に従って施工することが重要です。

5.仕上がりを確認する

施工後は、塗り残しや仕上がりなどを確認し、必要に応じて適切な処置を行います。

塗装職人には、塗る技術だけではなく、施工前から施工後まで各工程を適切に管理する能力が求められます。

塗装工事業と防水工事業の違いは?

塗装工事と防水工事は、建設業法では別の業種として区分されています。

塗装工事は、塗料・塗材等を工作物に吹き付け、塗り付け、または貼り付ける工事です。

一方、防水工事は、アスファルト、モルタル、シーリング材などによって防水を行う工事とされています。

国土交通省の業種区分では、塗装工事が17、防水工事が18として別々に整理されています。

たとえば「塗る」という作業だけを見ると似ているように感じる場合がありますが、建設業許可上は同じ業種ではありません。

塗膜防水工事についても、国土交通省の工事例では「防水工事」に分類されています。

そのため、実際の工事について業種や許可を判断するときは、「材料を塗るから塗装工事」と単純に決めるのではなく、具体的な施工内容から確認する必要があります。

塗装工事業に建設業許可は必要?

塗装工事業は建設業許可29業種の一つですが、軽微な建設工事だけを請け負う場合を除き、原則として建設業許可が必要です。

国土交通省によると、建設業を営もうとする者は、軽微な建設工事のみを請け負う場合を除いて、29種類の建設工事ごとに許可を受ける必要があります。

建築一式工事以外では、工事1件の請負代金が500万円未満の工事が「軽微な建設工事」の基準となります。

そのため、塗装工事の一人親方や個人事業主でも、事業規模や請け負う工事によって建設業許可が必要になる可能性があります。

「一人親方だから建設業許可はいらない」という仕組みではありません。

請負金額や工事内容などから判断することが重要です。

また、許可制度や金額基準などは改正される可能性があります。実際に許可の要否を判断するときは、国土交通省や許可行政庁の最新情報を確認してください。

塗装工事業で働く一人親方とは?

塗装工事の一人親方とは、塗装工事などの建設事業において、労働者を使用しないことを常態として自ら仕事を行う個人事業主などを指して使われます。

塗装業界では、塗装会社に雇用されて働く職人だけでなく、独立して仕事を請け負う職人もいます。

たとえば、元請会社や専門工事会社などから仕事を請け、自ら現場で施工する働き方です。

ただし、契約上「一人親方」「業務委託」「請負」と呼ばれていれば、必ず労働法上も一人親方になるとは限りません。

実態として指揮命令を受けて働くなど、働き方によっては労働者性が問題になる場合があります。

そのため、一人親方か労働者かについては、契約の名称だけではなく実際の働き方を踏まえて判断することが重要です。

塗装工事の一人親方は労災保険に加入できる?

塗装工事を含む建設事業の一人親方等は、一定の要件を満たす場合、労災保険の特別加入制度を利用できます。

労災保険は本来、事業主に雇用されて賃金を受ける労働者を対象とする制度です。

そのため、自営業者や事業主など労働者に該当しない人は、原則として通常の労災保険の対象ではありません。

しかし、業務の実態や災害の発生状況などから労働者に準じて保護することが適当と考えられる人については、一定の要件のもとで労災保険への特別加入が認められています。

厚生労働省は、特別加入できる一人親方等の事業の一つとして「建設の事業」を挙げています。

したがって、塗装工事に従事する一人親方も、実際の働き方などが要件に該当する場合には、建設業の一人親方等として特別加入を検討できます。

塗装工事で注意したい作業中の事故

塗装工事では、施工する場所や作業内容によってさまざまな危険があります。

特に外壁や屋根などの塗装では、高い場所で作業することがあります。

現場によっては、次のような事故や危険に注意が必要です。

  • 足場や屋根などからの墜落・転落
  • 作業場所での転倒
  • 工具や機械による負傷
  • 塗料や使用材料の飛散
  • 材料を取り扱う際の事故
  • 現場内の移動中の事故
  • 火気などを伴う作業での事故

また、塗料や溶剤などを使用する場合は、製品ごとの危険性・有害性や取扱方法を確認する必要があります。

必要な換気、保護具、火気管理などの安全対策は、使用材料や作業環境によって異なります。

製品のラベルやSDS(安全データシート)、現場の安全ルールなどを確認し、作業に応じた安全対策を行うことが重要です。

一人親方は自分自身が施工者であるため、技術だけでなく、自ら安全衛生管理を意識する必要があります。

塗装工事業についてよくある質問

Q
塗装工事業とは簡単にいうと何ですか?
A

塗装工事業とは、塗料や塗材などを工作物に吹き付けたり、塗り付けたり、貼り付けたりする建設業の専門工事です。

建物の塗装だけでなく、鋼構造物塗装や路面標示なども含まれます。

Q
塗装工事は建設業29業種の一つですか?
A

塗装工事業とは、塗料や塗材などを工作物に吹き付けたり、塗り付けたり、貼り付けたりする建設業の専門工事です。

建物の塗装だけでなく、鋼構造物塗装や路面標示なども含まれます。

Q
外壁塗装は塗装工事業ですか?
A

建物の外壁に塗料・塗材を施工する一般的な外壁塗装は、塗装工事に該当する代表的な施工の一つです。

ただし、実際の工事で複数業種にまたがる施工を行う場合などは、具体的な工事内容を確認する必要があります。

Q
路面標示工事も塗装工事業ですか?
A

はい。国土交通省が示している建設工事の例では、路面標示工事は塗装工事に含まれています。

住宅の外壁塗装だけでなく、道路などの路面標示も塗装工事業の範囲に含まれることがポイントです。

Q
塗装工事と防水工事は同じですか?
A

同じではありません。

建設業法では「塗装工事」と「防水工事」は別の業種です。塗膜防水工事については、国土交通省の工事例では防水工事に分類されています。

Q
塗装工事業に建設業許可は必要ですか?
A

軽微な建設工事だけを請け負う場合を除き、原則として建設業許可が必要です。

建築一式工事以外では、工事1件の請負代金が500万円未満であることが軽微な建設工事の基準です。実際の許可の要否については最新の法令・行政情報を確認してください。

Q
塗装工事の一人親方は労災保険に入れますか?
A

一定の要件を満たす建設業の一人親方等は、労災保険の特別加入制度を利用できます。

塗装工事に従事する一人親方も、実際の働き方などが要件に該当する場合には対象となります。

Q
塗装工事の一人親方なら自動的に労災保険に加入していますか?
A

いいえ。

一人親方だから自動的に労災保険が適用されるわけではありません。労働者に該当しない一人親方等が労災保険の対象になるためには、特別加入制度の対象であることを確認し、所定の手続きを行う必要があります。

まとめ 塗装工事業は建物から鋼構造物・路面標示まで扱う専門工事

塗装工事業とは、塗料や塗材などを工作物に吹き付け、塗り付け、または貼り付ける建設業の専門工事です。

建設業法上の塗装工事には、一般的な塗装だけでなく、溶射、ライニング、布張り仕上、鋼構造物塗装、路面標示なども含まれています。

塗装職人の仕事も、単にローラーや刷毛で塗料を塗るだけではありません。

施工対象の確認、下地処理、養生、仕様に沿った塗装、仕上がり確認まで、それぞれの工程を適切に行うことが重要です。

また、塗装職人として独立し、一人親方として仕事をする場合には、施工技術だけでなく、建設業許可や労災保険、安全衛生について理解しておく必要があります。

建設業の一人親方等には、一定の要件のもとで利用できる労災保険の特別加入制度があります。

塗装工事業で仕事を続けていくためにも、自分が行う工事の内容と働き方を把握し、必要な許可・保険・安全対策について確認しておきましょう。

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