屋根工事業とは、瓦、スレート、金属薄板などを使用して建物の屋根をふく建設業です。瓦屋根工事、スレート屋根工事、金属屋根工事のほか、屋根断熱工事や屋根一体型の太陽光パネル設置工事も屋根工事業に含まれます。

屋根工事業を営む場合は、原則として「屋根工事業」の建設業許可が必要です。ただし、工事1件の請負代金が消費税込み500万円未満の軽微な建設工事だけを請け負う場合は、建設業許可を受けずに営業できることがあります。

また、屋根工事では高所からの墜落・転落、屋根材の踏み抜き、資材の落下、電動工具による切創、夏場の熱中症などの危険があります。特に一人親方は元請会社の労災保険で当然に補償されるわけではないため、自分自身で一人親方労災保険へ特別加入しておくことが重要です。

この記事では、屋根工事業の定義と仕事内容、代表的な工事例、他業種との違い、建設業許可が必要になる条件、労働災害の危険性、一人親方労災保険についてわかりやすく解説します。

屋根工事業とは

屋根工事業とは、瓦、スレート、金属薄板などの屋根材を使用して、建築物の屋根をふく専門工事業です。

国土交通省は、屋根工事の内容を次のように定めています。

瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事

建設工事の例として挙げられているのは「屋根ふき工事」です。

ここでいう「瓦」「スレート」「金属薄板」は、屋根材の種類を示したものにすぎません。そのため、これら以外の材料を使用する場合でも、建物の屋根をふくことを目的とした工事であれば、屋根工事業に該当する可能性があります。

また、板金を使用した屋根工事も、原則として「板金工事業」ではなく「屋根工事業」に分類されます。国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」

屋根工事業の主な仕事内容

屋根工事業者は、新築建物の屋根施工だけでなく、既存屋根のふき替え、修理、補修、点検なども行います。

屋根材の取り付け

屋根の下地や形状に合わせて、瓦、スレート、金属板などの屋根材を取り付けます。

屋根材が風で飛ばされたり、ずれたりしないように、釘、ビス、金物などを使用して確実に固定します。

屋根材の取り付け

下地と防水シートの施工

屋根材を取り付ける前に、野地板などの下地を確認し、ルーフィングと呼ばれる防水シートを施工します。

屋根材だけで雨水を完全に防ぐのではなく、屋根材の下にある防水層も雨漏りを防ぐ重要な役割を担います。

下地と防水シートの施工

棟・谷・軒先などの雨仕舞

屋根の棟、谷、軒先、壁との取り合い部分などは、雨水が入り込みやすい場所です。

板金や防水材料を適切に加工・取り付け、建物内部への雨水の浸入を防ぎます。このように雨水を正しく排出し、建物内部へ入れないための処理を「雨仕舞」といいます。

既存屋根のふき替え

古くなった屋根材を撤去し、下地や防水シートを確認・補修してから、新しい屋根材を施工する工事です。

屋根材だけでなく、防水層や下地まで確認できるため、老朽化した屋根を根本的に改修できます。

既存屋根のふき替え

屋根カバー工法

既存の屋根材を撤去せず、その上に新しい防水シートや屋根材を重ねる工法です。

一般的に撤去する屋根材が少なくなる一方、既存屋根や下地の状態、建物に加わる重量などを確認したうえで採用する必要があります。

屋根の修理・補修

瓦のずれや割れ、スレートの破損、棟板金の浮き、固定金具の劣化などを補修します。

破損箇所だけを修理する場合でも、雨漏りの原因が別の場所にある可能性があるため、屋根全体や下地の状態を確認することが大切です。

屋根の修理・補修

屋根工事業に含まれる主な工事例

屋根工事業に該当する代表的な工事には、次のものがあります。

  • 瓦屋根ふき工事
  • スレート屋根ふき工事
  • 金属屋根ふき工事
  • 板金屋根工事
  • 屋根のふき替え工事
  • 屋根カバー工事
  • 瓦や屋根材の交換工事
  • 棟瓦の積み直し工事
  • 棟板金の交換工事
  • 屋根断熱工事
  • 屋根一体型太陽光パネルの設置工事
  • 屋根材の撤去を伴う屋根改修工事

工事の名称だけで業種区分が決まるわけではありません。工事の目的、使用する材料、施工方法、契約内容などから総合的に判断されます。

屋根材の主な種類

屋根工事では、建物の用途や構造、地域の気候、耐久性、重量、予算などに合わせて屋根材を選びます。

瓦屋根

粘土瓦やセメント系の瓦などを使用する屋根です。

瓦の配置、固定、棟部分の施工などには専門的な技能が必要です。瓦自体に耐久性があっても、固定材料や防水シート、下地などが劣化することがあります。

スレート屋根

薄い板状の屋根材を重ねて施工する屋根です。住宅では、セメントを主材料とする化粧スレートが広く使用されています。

既存建物の年代によっては、屋根材に石綿が含まれている可能性があります。改修や撤去を行う場合は、事前調査を行い、関係法令に従って適切に作業しなければなりません。

金属屋根

ガルバリウム鋼板などの金属製屋根材を使用する屋根です。

金属板の加工や継ぎ目、棟、谷、軒先などの納まりを適切に施工し、雨水の浸入や強風によるめくれを防止します。

屋根工事業と他の建設業種との違い

屋根工事は、板金工事、塗装工事、防水工事、電気工事などと一緒に施工されることがあります。

板金工事業との違い

金属薄板を使用して屋根をふく工事は「屋根工事業」に該当します。

一方、金属薄板を加工して建築物の外壁や内装などへ取り付ける工事は「板金工事業」に該当します。

工事内容原則的な許可業種
金属板で屋根をふく工事屋根工事業
外壁へカラー鉄板を張る工事板金工事業
厨房の天井へステンレス板を張る工事板金工事業

使用する材料が同じ金属板でも、屋根をふくことが工事の目的であれば屋根工事業となります。

塗装工事業との違い

屋根材を新設・交換して屋根をふく工事は「屋根工事業」に該当します。

一方、既存の屋根材へ塗料を塗り、表面を保護する屋根塗装工事は、原則として「塗装工事業」に該当します。

屋根の補修と塗装を一緒に請け負う場合は、契約内容やそれぞれの工事金額を確認し、必要な許可業種を判断する必要があります。

防水工事業との違い

屋根材を使って屋根をふく工事は「屋根工事業」です。

アスファルト、シート、塗膜、シーリング材などを使用して建築物へ防水処理を施す工事は、原則として「防水工事業」に該当します。

特にビルやマンションなどの平らな屋上で行われる防水工事は、一般的な屋根ふき工事とは区別して考える必要があります。

電気工事業との違い

屋根一体型の太陽光パネルを屋根材として設置する工事は「屋根工事業」に該当します。

一方、太陽光発電設備の配線や機器を設置する工事は「電気工事業」に該当します。

屋根の上に太陽光パネルを設置する工事には、パネルの固定や屋根の止水処理と、配線・電気設備の施工が含まれることがあります。その場合は、工事内容に応じて屋根工事業と電気工事業の両方を確認する必要があります。

タイル・れんが・ブロック工事業との違い

スレートを屋根材として屋根に施工する工事は「屋根工事業」に該当します。

一方、スレートを建物の外壁などに張り付ける工事は、原則として「タイル・れんが・ブロック工事業」に分類されます。

屋根工事業に建設業許可は必要?

屋根工事業を営む場合は、原則として「屋根工事業」の建設業許可が必要です。

ただし、工事1件の請負代金が消費税込み500万円未満となる軽微な建設工事だけを請け負う場合は、必ずしも建設業許可を受ける必要はありません。

500万円の基準を判断するときは、次の点に注意が必要です。

  • 消費税と地方消費税を含めて計算する
  • 注文者が提供する屋根材などの市場価格を加算する
  • 提供された材料の運送費も加算する
  • 同一工事を複数の契約へ分割した場合は合算して判断する
  • 単価契約でも1件の工事全体の請負代金で判断する

例えば、施工費が450万円であっても、注文者が提供する屋根材の市場価格と運送費を加えた金額が500万円以上になる場合は、屋根工事業の建設業許可が必要です。

国土交通省による現行の許可基準でも、建築一式工事以外は、工事1件の請負代金が500万円未満の場合に軽微な建設工事とされています。
国土交通省「建設業の許可とは」

屋根工事業で独立する一人親方の仕事

屋根工事業では、屋根施工の技術と現場経験を身につけた職人が、一人親方として独立するケースがあります。

一人親方が請け負う代表的な仕事は、次のとおりです。

  • ハウスメーカーや工務店から依頼される新築屋根工事
  • 瓦屋根のふき替え・補修
  • スレート屋根のふき替え・補修
  • 金属屋根の施工
  • 棟瓦や棟板金の修理
  • 台風や強風で破損した屋根の応急処置
  • 雨漏り箇所の調査・修理
  • 屋根カバー工事
  • 屋根断熱工事
  • 太陽光パネル設置に伴う屋根部分の施工

一人親方は施工だけでなく、現地調査、見積もり、契約、材料の発注、安全管理、保険加入なども自分で行います。

なお、契約上は一人親方であっても、仕事の指示方法、勤務時間、報酬の決め方などから、実質的に労働者と判断される場合があります。一人親方に該当するかどうかは、契約の名称ではなく実際の働き方によって判断されます。

屋根工事業で発生しやすい労働災害

屋根工事は高所作業が中心となるため、建設業の中でも特に墜落・転落へ注意しなければならない仕事です。

屋根からの墜落・転落

屋根の端、開口部、屋根面などから地上へ墜落する事故です。

屋根の勾配が急な場合だけでなく、緩い勾配でも、雨、朝露、霜、砂ぼこりなどによって屋根面が滑りやすくなることがあります。

厚生労働省の令和6年一人親方等の死亡災害発生状況でも、墜落・転落が主要な事故の型となっており、その起因物として「屋根、はり、もや、けた、合掌」が挙げられています。
厚生労働省「令和6年一人親方等の死亡災害発生状況」

屋根材の踏み抜き

古いスレート屋根や傷んだ下地を踏み抜き、建物内部へ墜落する事故です。

屋根材の見た目だけで安全と判断せず、事前に屋根材と下地の状態を確認し、歩み板や墜落防止設備を使用する必要があります。

はしご・脚立からの転落

屋根へ昇降するときに、はしごが滑ったり、倒れたりして転落する危険があります。

はしごの設置角度、固定状態、上部の突出長さなどを確認し、昇降時には工具や材料を手に持たないようにします。

屋根材や工具の落下

瓦、金属板、工具などを屋根から落とし、地上の作業員や第三者に接触させる事故です。

屋根上の整理整頓を行い、工具の落下防止措置を講じます。地上には立入禁止区域を設け、上下作業を避けることも重要です。

電動工具による切れ・巻き込まれ

屋根材の切断や加工に使用する電動工具によって、手や指を負傷する危険があります。

工具の保護カバーや電源コードを点検し、材料を安定させてから加工します。

熱中症

夏場の屋根面は直射日光を受け、非常に高温になります。

休憩、水分・塩分の補給、通気性のよい作業着の使用などを計画し、体調不良を感じた場合は作業を中止することが重要です。

強風による転倒・墜落

屋根上では地上よりも風が強く、身体があおられたり、屋根材が飛ばされたりする危険があります。

強風、大雨、降雪、雷などの悪天候時には、無理に作業を続けず、作業の中止を判断しなければなりません。

屋根工事業の一人親方は労災保険に入れる?

労働者を使用せず、建設事業を行うことを常態とする一人親方は、労災保険の特別加入制度を利用できます。

通常、一人親方や個人事業主は労働基準法上の労働者ではないため、元請会社が加入している労災保険によって当然に補償されるわけではありません。

一人親方労災保険へ特別加入すると、承認された業務中や通勤中に発生した災害について、一定の要件のもとで次のような労災保険給付を受けられます。

  • 治療に関する療養補償給付
  • 仕事を休んだ場合の休業補償給付
  • 障害が残った場合の障害補償給付
  • 死亡した場合の遺族補償給付
  • 傷病が長期化した場合の傷病補償年金
  • 介護が必要になった場合の介護補償給付

労災保険の特別加入は、民間の傷害保険とは異なる国の制度です。加入手続きは、都道府県労働局長の承認を受けた一人親方等の特別加入団体を通じて行います。

現場で労災保険の加入証明書を求められる理由

建設現場では、安全管理と入場者管理のため、一人親方に労災保険の特別加入証明書の提出を求めることがあります。

一人親方の特別加入は法律上一律に強制されるものではありませんが、元請会社の現場ルールにより、未加入では入場できない場合があります。

屋根工事は墜落・転落による重大事故の危険が高いため、現場への入場が決まってから慌てて手続きするのではなく、早めに加入しておくと安心です。

屋根工事業の一人親方が安全に働くためのポイント

屋根工事を安全に行うためには、次の対策が重要です。

一人親方であっても、元請会社や他の職人と作業手順や危険箇所を共有し、安全対策を省略しないことが大切です。

屋根工事業に関するよくある質問

Q
屋根工事業とはどのような仕事ですか?
A

瓦、スレート、金属薄板などを使って建物の屋根をふく仕事です。新築屋根の施工だけでなく、既存屋根のふき替え、カバー工事、修理、屋根断熱工事なども行います。

Q
板金屋根工事は板金工事業ですか?
A

いいえ。金属薄板を使って屋根をふく板金屋根工事は、原則として「屋根工事業」に該当します。金属板を建物の外壁や内装へ取り付ける工事は「板金工事業」に分類されます。

Q
屋根塗装は屋根工事業に含まれますか?
A

既存の屋根へ塗料を塗る工事は、原則として「塗装工事業」に該当します。屋根材を新設・交換して屋根をふく工事は「屋根工事業」です。

Q
屋上防水は屋根工事業に含まれますか?
A

アスファルト、シート、塗膜などを使用して屋上へ防水処理を施す工事は、原則として「防水工事業」に該当します。屋根材を使用して屋根をふく工事は「屋根工事業」です。

Q
太陽光パネルの設置は屋根工事業ですか?
A

屋根一体型の太陽光パネルを屋根材として設置する工事は「屋根工事業」に該当します。一方、太陽光発電設備の配線や機器の設置は「電気工事業」に該当します。施工内容によって複数の許可業種が関係します。

Q
屋根工事業の許可が必要になる金額はいくらですか?
A

原則として、工事1件の請負代金が消費税込み500万円以上になる場合は、屋根工事業の建設業許可が必要です。注文者が提供する屋根材の市場価格や運送費も加えて判断します。

Q
屋根工事業の一人親方も労災保険に加入できますか?
A

労働者を使用せず建設事業を行うことを常態とする一人親方は、一人親方等の特別加入団体を通じて労災保険へ特別加入できます。

Q
元請会社の労災保険で一人親方も補償されますか?
A

一人親方は原則として労働者ではないため、元請会社の労災保険で当然に補償されるわけではありません。一人親方として働く場合は、自分自身で労災保険へ特別加入する必要があります。

まとめ

屋根工事業は、瓦、スレート、金属薄板などを使って建築物の屋根をふく専門工事業です。

瓦屋根、スレート屋根、金属屋根の施工だけでなく、屋根のふき替え、カバー工事、屋根断熱工事、屋根一体型太陽光パネルの設置なども屋根工事業に含まれます。

一方、屋根塗装は塗装工事業、屋上防水は防水工事業、太陽光発電設備の配線や機器設置は電気工事業に該当するため、工事の目的と施工内容に応じた業種区分の確認が必要です。

また、屋根工事には墜落・転落や踏み抜きなど、死亡事故につながる危険があります。一人親方は元請会社の労災保険で当然に補償されるとは限らないため、万一の事故に備えて一人親方労災保険へ特別加入しておくことが重要です。


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