はじめに

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を守るために制定された法律であり、企業にとっては法的義務として遵守が求められる重要な法令です。
近年、この法律に基づく省令が改正され、企業は新たな基準や要件に対応する必要があります。
この記事では、最新の省令改正について詳しく解説し、企業が取るべき対応策と、特に一人親方に関連する改正内容について考察します。

労働安全衛生法とは?

労働安全衛生法は、1972年に制定され、労働者の安全と健康を確保するための基本的な法律です。
この法律は、職場の環境改善や安全対策の実施を通じて、労働災害や職業病の発生を防ぐことを目的としています。
また、企業には労働者の健康管理や安全教育の実施が義務付けられています。

最新の省令改正の概要

労働安全衛生法に基づく省令は、社会の変化や新たなリスク要因に対応するために、定期的に改正されますので注意が必要です。
最近の改正では、以下のようなポイントが強調されています。

  1. 職場のメンタルヘルス対策の強化
    職場におけるストレスチェック制度の見直しが行われ、企業には従業員のメンタルヘルスケアに対するより積極的な取り組みが求められています。
    これにより、企業はストレスチェックの結果に基づくフォローアップや、専門家によるカウンセリングの提供が必要になります。
  2. リモートワークにおける安全管理の明確化
    コロナ禍を契機にリモートワークが普及する中で、企業はリモートワーク環境における労働者の安全と健康管理を強化する必要があります。
    これには、適切な作業環境の整備や長時間労働の防止が含まれます。
  3. 高年齢労働者の労働環境改善
    高齢化社会に対応するため、高年齢労働者の安全と健康を確保するための措置が追加されました。
    具体的には、体力や健康状態に応じた業務の割り振りや、無理のない作業環境の提供が求められています。
  4. 化学物質管理の強化
    有害化学物質の取り扱いに関する規制が強化され、企業はこれらの物質に関するリスク評価や適切な防護対策を徹底することが求められています。
    特に、新たに指定された有害物質の使用に際しては、事前にリスク評価を行い、その結果に基づいた対応策を講じる必要があります。

労働安全衛生法における安全配慮義務の責任はだれ?

建設業請負安全配慮義務

上の図のように、労働安全衛生法ならびに安全配慮義務を負うものは、仕事や業務を依頼した企業や、企業の社員(担当部署等)そして、個人事業主や、一人親方等です。
つまり、仕事、業務を依頼した組織や本人そのものが義務を負うことになります。

1. 会社の代表者(経営者)

企業全体の安全配慮を統括する責任があり、労働者の安全と健康を守るために必要な環境を整備する義務を負います。

2. 人事部門や総務部門の責任者

人事部門や総務部門の責任者も、安全配慮義務を負います。労働者の労働環境やメンタルヘルスの管理に関与し、必要な措置を講じる責任があります。

3. 現場の管理者や監督者

工場や建設現場など、労働者が実際に働く場所での管理責任を持つ人々も、安全配慮義務を負います。これには、作業手順の安全性確認や適切な指導、危険を回避するための措置が含まれます。

4. 労働者自身

法的には企業や経営者が主に安全配慮義務を負いますが、労働者自身も自己の安全と健康を守るための協力義務があります。例えば、安全装置を適切に使用することや、危険な状況を上司に報告することが求められます。

安全配慮義務を果たさない場合、法的責任を負う可能性があります。
例えば、労災事故が発生し、適切な安全対策を怠っていた場合、労働者または労働者性があるものは、損害賠償を請求することができます。
また、責任を負うものの評判が損なわれるリスクもあり、これが長期的な経営に悪影響を及ぼす可能性もあります。
具体的には、以下のような人々が安全配慮義務を負うことになります。

一人親方に関する改正

特に注目すべきは、一人親方(個人事業主)の安全衛生管理に関する規定の強化です。

これまで、労働者を雇用していない一人親方は労働安全衛生法の対象外とされることが一般的でしたが、最近の改正では一人親方の安全確保にも注目が集まっています。

一人親方は、建設業や運送業などの現場で独自に仕事を行うケースが多く、労働災害のリスクが高い職種が多いことから、以下のような改正が行われました。

  • 安全教育の実施
    一人親方も、従業員と同様に安全教育を受けることが推奨されています。
    これは、特に高リスクな作業を行う際に、事故や災害を未然に防ぐための知識やスキルを向上させるためです。
  • 安全装備の義務化
    一人親方にも、適切な安全装備の使用が義務付けられました。
    具体的には、安全帽や安全帯、保護具の使用が徹底され、これらを怠ることで発生した災害については、個人の責任が問われる場合があります。
  • 健康診断の推奨
    一人親方は、自らの健康管理にも責任を持つ必要があります。
    これに関連して、定期的な健康診断の受診が推奨されており、特に過酷な労働環境で働く一人親方にとって、健康診断は重大な疾患の早期発見につながります。

特別加入への加入の促進

公営保険(社会保険制度)の特別加入(労災保険)への加入促進や、仕事を依頼する側での特別加入の確認です。
業務災害が発生したときの一人親方の経済的負担を、少しでも軽減するために、重大な事項です。
ただし、各団体が発行している「特別加入の証明書」が有効期限内であっても、本人の事情により「未加入」となっている場合があります。
ほとんどの承認団体が、加入証明書の返却など対策をうっていますが、紛失や未返却のケースも少なからず存在しています。
証明書に記載している「労働保険番号」や「有効期限」を確認したとしても、未加入状態の場合に業務災害が発生したときは、確認不十分となるケースがあるため、注意が必要です。

企業が取るべき対応策

省令改正に伴い、企業は以下のような対応を行うことで、労働者および一人親方の安全と健康を確保し、法令遵守を図ることができます。

  1. 定期的な教育と訓練の実施
    省令改正に対応するためには、まず従業員や協力会社の一人親方に対して最新の法令や規制に関する教育を行うことが重要です。
    特に、安全管理に関する新しい要件やリスク評価の方法について、定期的な研修を実施することで、従業員の意識向上を図ります。
  2. リスクアセスメントの強化
    企業は、職場の安全リスクを定期的に評価し、その結果に基づいて適切な対策を講じる必要があります。
    一人親方を含む全ての労働者に対して、安全な作業環境を提供することが求められます。
  3. 外部専門家の活用
    メンタルヘルスや化学物質管理など、専門知識が求められる分野においては、外部の専門家やコンサルタントを活用することが効果的です。
    また、一人親方に対しても、外部の安全管理専門家によるアドバイスや支援を提供することが推奨されます。
  4. 労働者および一人親方の意見を反映した職場環境の整備
    労働者や一人親方が職場環境の改善に積極的に関与できるよう、意見を反映させる仕組みを構築することが重要です。
    これにより、実際の労働環境に即した安全対策が実現しやすくなります。
  5. 継続的な改善活動の推進
    労働安全衛生に関する取り組みは、一度実施すれば終わりというわけではありません。
    企業は、継続的な改善活動を通じて、常に最新の状況に対応できる体制を整える必要があります。
    定期的な監査やレビューを行い、改善点を見つけ出し、迅速に対応することが求められます。

5. まとめ

労働安全衛生法に基づく省令改正は、企業にとって法令遵守の義務を果たすだけでなく、労働者や一人親方の安全と健康を守るための重要なステップです。
企業は、これらの改正に迅速かつ的確に対応することで、安全で健康的な職場環境を提供し、従業員や一人親方のモチベーションや生産性を向上させることができます。

また、省令改正への対応は、企業の社会的責任(CSR)の一環としても重要な位置付けを持っています。
法令遵守と労働者、一人親方の健康管理をしっかりと行うことで、企業の信頼性を高め、長期的な成長を支える基盤を築くことができるでしょう。

今後も、労働安全衛生法の改正動向を注視し、適切な対応を続けることが求められます。

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