防水工事業とは、建物や構造物に雨水などが入り込むことを防ぐため、防水層を形成したり、シーリング材などを施工したりする建設業の専門工事です。 国土交通省が示す工事例には、アスファルト防水工事、モルタル防水工事、シーリング工事、塗膜防水工事、シート防水工事、注入防水工事などがあります。

防水工事は、マンションやビル、戸建住宅、工場などの屋上・ベランダ・バルコニーをはじめ、建物のさまざまな場所で行われます。

防水工事の職人

「防水屋は屋上に防水材を塗る仕事」と思われることもありますが、実際にはそれだけではありません。

ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水、シーリングなど、建物や施工箇所、仕様に応じてさまざまな工法が使われます。

また、防水工事の職人として経験を積み、個人事業主や一人親方として現場で仕事をする人もいます。

この記事では、防水工事業とはどのような建設業なのかを中心に、仕事内容、代表的な工法、施工場所、仕事の流れ、建設業許可、一人親方と労災保険の関係まで、建設業で働く方にも企業担当者にもわかりやすく解説します。

防水工事業とは?

防水工事業とは、建物や構造物への水の浸入を防ぐために、防水材などを使用して防水性能を持たせる専門工事です。

建設業法では建設工事が業種ごとに分類されており、防水工事業は専門工事の一つに位置付けられています。

国土交通省が示す建設業許可の業種区分では、防水工事について「アスファルト、モルタル、シーリング材等によって防水を行う工事」とされています。

具体的な工事例には、次のものがあります。

  • アスファルト防水工事
  • モルタル防水工事
  • シーリング工事
  • 塗膜防水工事
  • シート防水工事
  • 注入防水工事

つまり「防水工事」は一つの施工方法を表す言葉ではありません。

建物や構造物への水の浸入を防止するという目的を持った、複数の施工方法を含む専門工事と理解するとわかりやすいでしょう。

防水工事業の基本情報

防水工事業について最初に押さえておきたい情報を整理すると、次のようになります。

項目内容
建設業における分類専門工事
業種防水工事業
主な目的建物・構造物への水の浸入を防ぐ
主な工事塗膜防水、シート防水、アスファルト防水、シーリングなど
主な施工場所屋上、ベランダ、バルコニー、外壁目地など
主な作業下地確認、下地処理、防水層の施工、端部処理、仕上がり確認など
一人親方防水工事に従事する一人親方もいる
労災保険一定の要件を満たす一人親方等は特別加入制度の対象となる

防水工事業を理解するときは、「防水工事=屋上」というイメージだけで考えないことがポイントです。

施工対象や使用する材料、工法は幅広く、建物の状況や工事の仕様によって仕事内容が変わります。

防水工事はどこで行われる?

防水工事は、雨水などの浸入を防ぐ必要がある場所で行われます。

代表的な施工場所には、次のようなものがあります。

  • ビル・マンションなどの屋上
  • 陸屋根
  • ベランダ
  • バルコニー
  • 外壁の目地
  • サッシまわり
  • その他、防水性能が求められる部分

ただし、「屋上なら必ず同じ工法」というわけではありません。

既存の防水層、下地の状態、建物の構造、施工面積、形状、用途、設計・施工仕様などによって、採用される工法は変わります。

そのため、防水職人には材料を扱う技術だけではなく、施工場所や下地の状態を確認し、決められた仕様に沿って適切に施工する能力も求められます。

防水工事にはどんな種類がある?

防水工事の代表的な種類には、塗膜防水、シート防水、アスファルト防水、シーリング工事などがあります。 また、実際の現場ではウレタン系の塗膜防水やFRP防水なども施工されています。

工法によって使用する材料や施工方法が異なるため、それぞれの特徴を理解することが重要です。

防止工事工法紹介

ウレタン防水とは?

ウレタン防水とは、液状のウレタン系防水材を施工し、防水層を形成する塗膜防水の一種です。

液状の材料を使用するため、屋上やベランダなど、さまざまな形状の施工箇所に対応しやすい工法の一つです。

一般的には下地の確認・調整を行い、プライマーなどを施工したうえで、定められた仕様に沿って防水材を塗り重ねて防水層を形成します。

材料、塗布量、工程、乾燥・硬化時間などは製品や工法によって異なるため、現場では仕様に従った施工が重要です。

シート防水とは?

シート防水とは、防水性能を持つシートを施工面に張り付けるなどして、防水層を形成する工法です。

液状の材料を現場で塗って防水層を形成する塗膜防水とは、施工方法が異なります。

シート防水では、シートそのものだけでなく、シート同士の接合部、端部、立上りなどの処理も重要になります。

屋上など比較的広い面積に採用されることがある防水工法です。

アスファルト防水とは?

アスファルト防水とは、アスファルト系の材料を使用して防水層を形成する工法です。

防水工事の代表的な工法の一つであり、国土交通省が示す防水工事の工事例にも「アスファルト防水工事」が明記されています。

施工方法や使用する材料は仕様によって異なるため、現場では施工図や仕様書などを確認して作業を進めます。

FRP防水とは?

FRP防水とは、樹脂とガラス繊維などの補強材を使用して防水層を形成する工法です。

FRPは「Fiber Reinforced Plastics」の略称で、日本語では一般に「繊維強化プラスチック」と呼ばれます。

国土交通省の公共建築木造工事標準仕様書では、FRP系塗膜防水について、合板類などを下地とするバルコニー床等への施工が規定されています。

戸建住宅のバルコニーなどで採用されることがある工法です。

シーリング工事も防水工事に含まれる?

はい。国土交通省が示す建設工事の例では、シーリング工事は防水工事の例として挙げられています。

シーリング工事では、外壁の目地やサッシまわりなどにシーリング材を施工します。

建物には部材同士の継ぎ目や取り合い部分があるため、そのような場所から水が浸入しないよう適切に施工することが重要です。

「防水工事=屋上の工事」だけではありません。

外壁の目地などを施工するシーリング工事も、防水工事業に含まれる重要な仕事です。

防水工事業の仕事内容は?施工の流れを解説

防水工事の工程は工法や現場によって異なりますが、基本的には施工場所の確認→下地処理→防水層の施工→細部の処理→施工状態の確認という流れで進められます。

防水工事工程

1.施工場所と下地の状態を確認する

最初に施工場所と下地の状態を確認します。

特に改修工事では、既存の防水層や劣化している部分などを確認し、必要な処理を判断します。

防水層の性能を確保するためには、防水材そのものだけでなく、その下にある下地の状態も重要です。

2.清掃・下地処理を行う

施工面を清掃し、工法や現場の状態に応じた下地処理を行います。

たとえば、厚生労働省が公開している技能検定のFRP防水工事作業の試験科目・範囲にも、下地の点検・清掃や下地処理に関する知識が含まれています。

防水職人は「防水材を塗るだけ」の仕事ではなく、施工前の下地づくりも重要な仕事です。

3.防水層を形成する

下地を整えた後、採用された工法に従って防水層を施工します。

ウレタン防水であれば液状の防水材を使用し、シート防水なら防水シートを施工します。FRP防水では、樹脂や補強材などを用いて防水層を形成します。

それぞれの材料や工法について、定められた施工手順を守る必要があります。

4.端部や取り合い部分を処理する

防水工事では、広い平面部分だけを施工すれば完成するわけではありません。

立上り、端部、排水口まわり、部材との取り合いなど、細かな箇所も適切に処理する必要があります。

このような部分の施工にも専門的な技術が求められます。

5.施工状態を確認する

施工後は、防水層や仕上がりの状態などを確認します。

防水工事は完成後に見えにくくなる部分もあるため、各工程で適切に施工することが重要です。

防水工事業に建設業許可は必要?

防水工事業は建設業許可の対象となる専門工事ですが、すべての防水工事で必ず建設業許可が必要になるわけではありません。

建設業法では、一定の「軽微な建設工事」のみを請け負う場合を除き、建設業の許可を受ける必要があります。

建築一式工事以外では、請負代金500万円未満の工事が軽微な建設工事の基準の一つです。

そのため、一人親方や個人事業主として防水工事を請け負う場合も、「一人で仕事をしているから許可は必要ない」と判断するのではなく、実際の工事内容や請負金額などから確認する必要があります。

なお、制度は改正される可能性があるため、実際に許可の要否を判断するときは国土交通省や管轄行政庁などの最新情報を確認してください。

防水工事業で働く一人親方とは?

防水工事の一人親方とは、防水工事に従事し、労働者を常時使用せず、自ら現場で仕事をする個人事業主などを指して使われる言葉です。

防水工事一人親方

建設業では、会社に雇用されて働く職人だけでなく、独立して一人親方として仕事をする職人もいます。

防水工事でも、元請会社や専門工事会社などから工事を請け、自ら施工する一人親方がいます。

ただし、「一人親方」と呼ばれていることだけで法律上の扱いが決まるわけではありません。

契約形式が請負であっても、実際の働き方によって労働者性が問題となる場合があります。

そのため、一人親方に該当するかどうかを考える際には、契約書上の名称だけではなく、実際の就労実態を確認することが重要です。

防水工事の一人親方は労災保険に加入できる?

建設業の一人親方などは、一定の要件を満たす場合、労災保険の「特別加入制度」を利用できます。

労災保険は、本来、労働者の業務上または通勤による災害などに対して必要な保険給付を行う制度です。

一方、一人親方や自営業者などは労働者ではないため、原則として通常の労災保険の対象にはなりません。

しかし、業務の実態や災害の発生状況などからみて、労働者に準じて保護することが適当と認められる一定の人については、特別に労災保険へ加入できる制度が設けられています。

これが労災保険の特別加入制度です。

建設業の一人親方等は、この特別加入制度の対象となる区分の一つです。

防水工事の一人親方として現場で働いている方は、自分が特別加入の対象になるか、加入条件や手続きとあわせて確認しておきましょう。

防水工事で注意したい作業中の事故

防水工事では屋上やベランダなどで施工することがあり、現場によっては高所で作業します。

そのため、防水工事に従事する一人親方や事業者は、施工技術だけでなく安全対策も重要です。

現場の状況によっては、たとえば次のような事故や危険が考えられます。

  • 屋上、開口部、足場などからの墜落・転落
  • 作業場所での転倒
  • 工具や材料を扱う際の負傷
  • 重量物を運搬する際の負傷
  • 使用する材料に起因する事故
  • 現場内での移動や作業準備中の事故

もちろん、防水工事だから必ずこのような事故が発生するわけではありません。

施工場所、作業内容、使用材料、設備などによって危険性は異なります。

現場のルールを守り、必要な保護具を使用し、使用する材料の注意事項を確認するなど、それぞれの作業に応じた安全対策が必要です。

特に一人親方は、自ら作業する職人であると同時に、自分自身で安全を意識して仕事をすることが重要になります。

防水工事業についてよくある質問

Q
防水工事業とは簡単にいうと何ですか?
A

防水工事業とは、建物や構造物への水の浸入を防ぐため、防水層を形成したりシーリング材などを施工したりする建設業の専門工事です。

代表的な工事には、塗膜防水、シート防水、アスファルト防水、シーリングなどがあります。

Q
防水工事は何業に分類されますか?
A

建設業法上、防水工事業は専門工事の一つです。

国土交通省が示す建設工事の種類では、防水工事の例としてアスファルト防水、モルタル防水、シーリング、塗膜防水、シート防水、注入防水などが挙げられています。

Q
防水工事と塗装工事は同じですか?
A

同じではありません。

建設業許可では「塗装工事」と「防水工事」は別の業種として分類されています。

ただし、実際の建設工事では関連する作業が行われる場合もあるため、工事内容に応じて適切な業種を判断する必要があります。

Q
シーリング工事は防水工事ですか?
A

国土交通省が示す建設工事の例では、シーリング工事は防水工事の例として分類されています。

外壁の目地やサッシまわりなどにシーリング材を施工し、水の浸入を防ぐために行われます。

Q
防水工事にはどんな種類がありますか?
A

代表的な種類として、塗膜防水、シート防水、アスファルト防水、シーリング、モルタル防水、注入防水などがあります。

塗膜防水の一つとしてウレタン防水があり、現場ではFRP防水なども使用されています。

Q
防水工事の一人親方でも建設業許可は必要ですか?
A

一人親方であるかどうかだけで建設業許可の要否は決まりません。

請け負う工事の内容や請負代金などによって判断する必要があります。軽微な建設工事のみを請け負う場合には、建設業許可を受けずに営業できる場合があります。

Q
防水工事の一人親方は労災保険に入れますか?
A

建設業の一人親方などは、一定の要件を満たす場合、労災保険の特別加入制度を利用できます。

加入対象になるかどうかは実際の働き方なども関係するため、最新の制度内容を確認してください。

Q
一人親方なら必ず労災保険の特別加入者になりますか?
A

いいえ。一人親方だから自動的に労災保険へ加入するわけではありません。

労災保険の特別加入は、対象となる人が所定の手続きを行って加入する制度です。また、一人親方に該当するかどうかについても実際の働き方を踏まえて判断する必要があります。

まとめ|防水工事業は建物を水から守る専門工事

防水工事業とは、建物や構造物への水の浸入を防ぐため、防水層の形成やシーリングなどを行う建設業の専門工事です。

代表的な工事には、アスファルト防水、塗膜防水、シート防水、シーリングなどがあり、実際の現場ではウレタン防水やFRP防水なども行われています。

防水職人の仕事は、単に防水材を塗ったりシートを張ったりするだけではありません。施工場所の確認、下地処理、防水層の形成、端部や取り合い部分の処理、施工状態の確認など、各工程で専門的な知識と技術が求められます。

また、防水工事の職人として独立し、一人親方として仕事をする場合には、施工技術だけでなく、建設業許可や労災保険について理解しておくことも重要です。

特に建設業の一人親方等には、一定の要件のもとで利用できる労災保険の特別加入制度があります。

防水工事業で安全に仕事を続けていくためにも、自分の仕事内容と働き方を把握し、必要となる制度や安全対策について確認しておきましょう。

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