大工工事業とは、木材の加工や取付けなどによって工作物を築造したり、工作物に木製設備を取り付けたりする専門工事業です。
戸建住宅をはじめ、店舗、マンション、公共施設など、さまざまな建築現場で大工が活躍しています。
「大工」と聞くと、木造住宅を一軒建てる職人をイメージする人が多いかもしれません。
しかし、建設業法上の大工工事には、木造建築の木工事だけでなく、型枠工事や造作工事なども含まれます。
また、注意したいのが「大工工事」と「建築一式工事」の違いです。
大工が住宅の重要な部分を施工していても、
大工工事=建築一式工事
ではありません。
建築物全体を総合的に企画・指導・調整して完成させる建築一式工事と、木材の加工・取付けなどを専門的に行う大工工事は、建設業法上では別の工事区分です。
この記事では、大工工事業の仕事内容、工事の種類、施工の流れ、建築一式工事や内装仕上工事との違い、建設業許可、大工として働く一人親方と労災保険についてわかりやすく解説します。

大工・大工工事業とは
大工工事業とは、木材の加工または取付けによって工作物を築造したり、工作物に木製設備を取り付けたりする専門工事です。
建設業29業種の中では「専門工事」に分類され、住宅や店舗、公共施設など、さまざまな建築物の木工事を担当します。
「大工」と聞くと、家を一軒丸ごと建てる職業というイメージを持つ方も少なくありません。しかし、建設業法上では、建物全体を総合的に完成させる「建築一式工事」と、木工事を専門に行う「大工工事」は別の業種として区分されています。
大工工事業に該当する代表的な工事は、次の3つです。
- 大工工事
- 型枠工事
- 造作工事
これらは建物を建築するうえで欠かせない工事であり、建物の構造や内部空間を形づくる重要な役割を担っています。
住宅建築だけでなく、学校、病院、店舗、工場、マンションなど、木材を使用するあらゆる建築物で大工工事業の技術が活躍しています。
大工工事業の主な仕事内容
大工工事業では、建物の骨組みを組み立てたり、木製の建具や造作材を施工したりするなど、建築物の基礎となる木工事を担当します。
近年では、プレカット材や電動工具の普及により施工方法は変化していますが、現場での加工や調整など、高度な技術が必要となる仕事であることに変わりはありません。
木造住宅の躯体工事
木造住宅では、基礎工事完了後に柱・梁・桁・母屋などを組み立て、建物の骨組みを造ります。
建物全体の強度に関わる重要な工程であり、わずかな施工誤差でも建物全体に影響するため、高い技術力が求められます。

主な作業
- 土台敷き
- 柱・梁の組立
- 小屋組
- 筋交い施工
- 構造金物の取付
- 合板施工
- 建方(上棟)
型枠工事
鉄筋コンクリート造や基礎工事では、コンクリートを流し込むための型枠を組み立てます。
図面どおりの寸法・形状に施工しなければ、建物の品質に大きく影響するため、精度の高い施工が必要です。

主な作業
- 型枠加工
- 型枠組立
- 型枠固定
- セパレーター設置
- コンクリート打設後の型枠解体
造作工事
建物の構造完成後に行われる木工事です。
住宅の内装や店舗の造り付け家具など、完成後に目に見える部分を施工します。

主な作業
- 壁下地
- 天井下地
- フローリング施工
- 建具枠取付
- カウンター施工
- 収納家具施工
- 階段施工
造作工事は建物の見た目や使い勝手を左右するため、仕上がりの美しさも重要になります。
大工工事業で使用する主な工具・機械
大工工事では、多くの手工具や電動工具を使い分けます。
手工具
- のこぎり
- 金づち
- ノミ
- カンナ
- スコヤ
- 差し金
- 墨つぼ
- メジャー
電動工具
- 丸ノコ
- インパクトドライバー
- スライド丸ノコ
- 電動カンナ
- ジグソー
- ハンマードリル
- 釘打機
近年はプレカット材の利用が増えていますが、現場での加工や微調整には熟練した技術が欠かせません。
大工工事業に該当する主な工事例
大工工事業には、次のような工事があります。
- 木造住宅の建築
- アパート建築
- 店舗の木工事
- 保育園・学校の木工事
- 公共施設の木工事
- 神社・仏閣の木工事
- 型枠工事
- 階段施工
- フローリング施工
- 造作家具施工
- 木製カウンター施工
- 木製建具枠施工
ただし、建物全体を請け負う工事と、大工工事だけを請け負う工事は区別されます。
大工工事業と建築一式工事業の違い
大工工事業と最も混同されやすいのが、建築一式工事業です。
どちらも建物を建築する仕事ですが、役割は大きく異なります。
大工工事業
木材の加工・組立・取付けなど、木工事を専門に施工する工事です。
建築一式工事の一部を担当する専門工事として施工することが一般的です。
建築一式工事業
建築物全体を総合的に請け負い、施工計画、工程管理、安全管理、品質管理を行いながら建物を完成させる工事です。
大工工事だけでなく、電気工事、管工事、屋根工事、左官工事、内装仕上工事など、多くの専門工事業者を調整しながら工事全体を管理します。
戸建て住宅全体を元請として完成まで請け負う → 建築一式工事
柱や梁を組み立てる → 大工工事
型枠を施工する → 大工工事
木製の収納棚やカウンターを施工する → 大工工事
契約書に「一式工事」と書かれているだけでは建築一式工事になるわけではありません。
実際に工事全体を総合的に企画・調整・管理しながら建物を完成させる工事であるかどうかによって判断されます。
大工工事業と内装工事の違い
大工工事業と内装仕上工事業も混同されることがあります。
大工工事業は木材を加工・取付けて建物を造る工事ですが、内装仕上工事業は建物内部の仕上げを行う工事です。
大工工事業
大工工事業は、木材を加工・組み立て・取り付けることによって、建築物の構造や下地、木製設備を施工する専門工事です。
建物の骨組みや壁・天井の下地、床組、階段、造り付け家具など、建物の基礎となる木工事を担当します。
内装仕上工事業
内装仕上工事業は、建築物の内部空間を仕上げるための工事です。
壁紙(クロス)、床材、カーペット、ビニル床シート、カーテン、ブラインド、間仕切りなどを施工し、建物を使用できる状態へ仕上げる役割があります。
大工工事で施工された下地の上に、最終的な仕上げ材を施工することが一般的です。
壁や天井の下地を組む → 大工工事
石こうボードを施工する → 大工工事
クロスを貼る → 内装仕上工事
カーペットやタイルカーペットを施工する → 内装仕上工事
カーテンやブラインドを設置する → 内装仕上工事
同じ室内工事でも、担当する工事内容によって業種が異なります。
大工工事業に建設業許可が必要となるケース
大工工事業は、建設業許可29業種の一つです。
建設工事を営業として請け負う場合は、原則として建設業許可が必要です。
ただし、大工工事業については、「軽微な建設工事」のみを請け負う場合には、建設業許可を受けなくても営業できるケースがあります。
法人だけでなく、一人親方や個人事業主についても同じ考え方です。
「一人親方だから建設業許可は必要ない」というわけではありません。
実際に請け負う工事の内容や請負代金などによって、建設業許可が必要になる場合があります。
建設業許可における軽微な建設工事の基準などは制度改正の影響を受けるため、実際の許可の要否については、国土交通省や許可行政庁が公表する最新情報を確認してください。

大工工事業で取得すると役立つ資格
資格がなくても大工として働くことはできますが、資格を取得することで仕事の幅が広がり、元請会社からの信頼も高まります。
建築大工技能士
大工職人として代表的な国家資格です。
木造建築に必要な技能を証明する資格であり、1級・2級・3級があります。
経験年数に応じて受験資格が設けられており、独立を目指す方にも人気があります。
建築施工管理技士
現場監督や施工管理を目指す場合に役立つ国家資格です。
工程管理・品質管理・安全管理など、建築工事全体を管理する知識が求められます。
木造建築士・二級建築士
設計業務や確認申請など、より幅広い仕事を行う場合に役立ちます。
工務店として事業を拡大したい方にも取得者が多い資格です。
一人親方として独立するケース
大工工事業は、一人親方として独立する方が非常に多い業種です。
会社で経験を積んだ後、個人事業主として独立し、工務店やハウスメーカー、リフォーム会社などから仕事を受注するケースが一般的です。
主な仕事内容には次のようなものがあります。
- 木造住宅の建方
- 造作工事
- リフォーム工事
- 店舗の木工事
- 木製家具の施工
- 型枠工事
- 建具枠施工
近年では、大工仕事だけでなく、工程管理や協力会社との打ち合わせなどを任される一人親方も増えています。
ただし、建物全体を請け負う場合には、建築一式工事との違いや建設業許可の要件を十分理解しておく必要があります。
大工工事業は労働災害のリスクが高い仕事
大工工事は、高所作業や電動工具を使用する機会が多く、建設業の中でも労働災害のリスクが高い仕事です。
主な労働災害には次のようなものがあります。
- 足場や屋根からの墜落・転落
- 丸ノコによる切創事故
- 釘打機による負傷
- 飛来・落下物による事故
- 木材運搬中の腰痛
- 重機との接触事故
- 感電事故
- 夏場の熱中症
また、住宅建築では高所作業が多く、脚立や足場からの墜落事故も少なくありません。
日頃から保護具の着用や安全設備の点検を徹底し、安全第一で作業を行うことが重要です。
建設業の一人親方は労災保険に特別加入できます
一人親方は、労働基準法上の「労働者」ではないため、一般の労災保険の対象にはなりません。
そのため、大工工事業に従事する一人親方は、「一人親方等の労災保険特別加入制度」を利用することで、一定の業務中や通勤中の災害について補償を受けることができます。
また、多くの元請会社やハウスメーカーでは、現場へ入場する際に労災保険特別加入証明書の提出を求めています。
安心して仕事を続けるためにも、一人親方労災保険への特別加入を検討することをおすすめします。
自分が「建設業種で働いている」と思っていても、国土交通省の建設業29種に当てはまらない業種もやっていた、というケースが多々見られます。自分が何の業種で、業務を行っているかを知ることは、かなり重要です。
特別加入の労災保険は、業種をまたがっていれば、何重にも加入が可能。
さらに、掛けた「給付基礎日額」は合算して計算されます。
複数事業で労災保険加入をしても、無駄にはなりませんので、検討してみましょう。
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大工工事業の一人親方の平均年収・中央値は?
大工として働く一人親方の場合、「独立するとどのくらい稼げるのか」「平均年収はいくらなのか」が気になる方も多いでしょう。
大工の収入は、会社員として働く場合と、一人親方として独立して働く場合で大きく異なります。
大工の平均年収
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、大工の全国平均年収は約485.5万円です。
これは令和7年(2025年)の「賃金構造基本統計調査」をもとにしたデータで、平均年齢は50.2歳となっています。
ただし、この数字は主に雇用されて働く労働者の賃金データです。そのため、個人事業主として仕事を請け負う「一人親方」の年収をそのまま表したものではありません。
大工の一人親方の平均年収はどのくらい?
大工の一人親方については、国が「一人親方だけ」を対象として算出した平均年収の公的統計はありません。
そのため、実際の収入は日当や年間の稼働日数、元請・下請の違いなどから考える必要があります。
民間資料では、大工の一人親方の日当を約2万1,000円前後とする調査例があります。
仮に日当約2万1,000円で年間246日働いた場合、
2万1,000円 × 246日 = 約517万円
となるため、一人親方として常用に近い形で働く大工の場合、年収500万円前後が一つの目安になります。
一方、自分で工事を直接受注する元請の一人親方では、年間売上が700万円、800万円、あるいは1,000万円を超えるケースもあります。
大工の一人親方の年収中央値は?
一人親方の大工だけを対象とした「年収中央値」についても、信頼できる公的な統計は公表されていません。
そのため、
「大工の一人親方の年収中央値は○○万円」
と断定することは難しいのが実情です。
目安としては、雇用されている大工の平均年収が約485万円であり、一人親方の日当から計算した年間収入が500万円前後になることから、一人親方の中心的な収入帯はおおむね400万円台後半~600万円程度と考えるとイメージしやすいでしょう。
ただし、一人親方の場合は「年収」「売上」「所得」を区別する必要があります。
一人親方は「年収=手取り」ではない
一人親方の場合、仕事で受け取った金額がそのまま手取りになるわけではありません。
たとえば年間600万円の売上があっても、そこから工具・車両・ガソリン代・材料費・通信費・保険料など、仕事に必要な経費を支払います。
そのため、
売上 - 必要経費 = 事業所得
という考え方が基本になります。
会社員の「年収600万円」と、一人親方の「年間売上600万円」では意味が異なるため、単純に比較しないよう注意が必要です。
大工の一人親方で年収が変わるポイント
大工の一人親方は、働き方によって収入にかなり差が出ます。
特に影響するのが、日当単価、年間の稼働日数、経験・技術、元請から直接仕事を受注できるか、リフォームなどを一式で請け負えるかといった点です。
常用の応援仕事を中心にする場合は「日当×稼働日数」で収入の上限がある程度決まります。
一方で、施主や工務店などから工事を直接請け負えるようになると、単純な日当ではなく「工事単位」で利益を確保できるため、収入が大きくなる可能性があります。
大工工事業の一人親方の年収まとめ
大工の平均年収について、厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査をもとにしたjob tagでは約485.5万円となっています。
一方、一人親方については公的な平均年収・中央値の統計がないため、正確な数字を断定することはできません。
一人親方として常用に近い働き方をする場合には年収500万円前後が一つの目安となりますが、仕事を直接受注する元請型の一人親方では、それ以上の売上・所得を得るケースもあります。
よくある質問
- Q大工工事業とはどのような仕事ですか?
- A
木材を加工・組み立て・取り付けることで、建築物の構造や内装を施工する専門工事です。大工工事、型枠工事、造作工事などが含まれます。
- Q建築一式工事業との違いは何ですか?
- A
大工工事業は木工事を専門に施工する業種です。
建築一式工事業は、建物全体を総合的に請け負い、多くの専門工事を調整・管理しながら建物を完成させる業種です。
- Q型枠工事も大工工事業ですか?
- A
はい。
建設業法上では、型枠工事は大工工事業に含まれる専門工事です。
- Q大工工事業には建設業許可が必要ですか?
- A
請負金額が500万円(税込)以上となる工事を営業として請け負う場合には、大工工事業の建設業許可が必要です。
- Q一人親方でも大工工事業として独立できますか?
- A
はい。
住宅建築や造作工事、リフォーム工事などを請け負う一人親方は全国に数多くいます。
ただし、請負金額によっては建設業許可が必要になります。
- Q大工工事業の一人親方は労災保険に加入できますか?
- A
はい。
建設業に従事する一人親方であれば、「一人親方等の労災保険特別加入制度」を利用できます。
加入することで、一定の業務中や通勤中の災害について補償を受けることができます。
まとめ
労災保険は「労働基準監督署」へ出向いても加入手続きや、業務災害手続きはしてくれません。
厚生労働省・労働局から承認を受けた「特別加入承認団体」から手続きを行い、仕事中の災害から来る経済的損失から身を守りましょう。

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投稿日
更新日
大学卒業後、今は無きXEROXで営業力を発揮。コンテスト受賞歴は多数。
37歳の時人生観を変える大きな出来事に会い会社員を辞め起業。IT、建設、金融、海事や伝統工芸など様々な事業を展開し経験を重ねる。
各種業界経営者からのセミナー依頼を多数受け、講師として活躍。厚生労働省承認特別加入団体の運営を開始。
相談者に耳を傾けるため産業カウンセラーの資格を得て労災関連全般の業務を執り行っている。
–自己紹介–
人見知りという概念が欠落しているらしく、初対面でもすぐ仲良くなります。
相手の気持ちに入り込みすぎて疲れちゃうことも多々あり。
人の笑顔が大好物。嫌いなものは、なぜかシイタケ。細かく刻んであっても見つけられる得意技。
趣味は釣り全般・ギター・ガーデニング・料理・DIY・車・喫茶店回り、船の操船などなど。
多趣味すぎて時々自分でも困ることあり。
釣りに関しては遊漁船経営までしてしまったという変な人です。
座右の銘は「失敗は行動している証」
失敗した人を「ほら見たことか!」という人ほど何もしてないですよね。
